イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」でおなじみのジェレミー・クラークソンが英「Driving.co.uk」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
今回紹介するのは、レクサス・IS300h Fスポーツのレビューです。

千年以上の間、人類はスピードを求めてきた。石器時代には最速の走者が最高の食事にありつけ、そして王となった。馬を使うようになっても同じことが起きた。チンギス・カンは、徴集した兵士に粗絹の鎧を着せ、速く移動できるようにさせたからこそ成功できた。蒸気機関の時代には、機関士たちが機関車をいかに速く走らせられるか競っており、海上では大型船が大西洋でレースを行っていた。そして冷戦の時代には最速の航空機を持つものが勝利すると考えられていた。
私が免許を取ってすぐの頃、友人とともに語り合ったのは、最速の車は何かという話だった。私は自動車雑誌を何時間も読み耽って愛車のフォルクスワーゲン・シロッコGLiがアンディ・スコットのヴォクスホール・シェヴェットHSよりも速い証拠を見つけ出そうとした。そして車に乗ればパワーを競い合ったものだ。
ところが今ではおかしなことが起きている。今やスピードが重要ではなくなってしまったようだ。コンコルドは燃費の良いボーイング787ドリームライナーに取って代わられた。HS2にはコスト面で疑問が呈されている。そして道路ではありとあらゆるものが我々を遅くしようとしている。ちょっと前には、ZZトップのドラマーであるフランク・ベアードは、誰よりも早くパーティーに到着し、誰かと一夜を過ごし、誰よりも遅く出発するためにフェラーリを購入していた。
ところが今では、10代の少年が最初に買う車について話しているのを聞くと、どうも誰もが燃費の話をしているようだ。私の息子は愛車のフィアット・プントTwinAirを随分と気に入っているようだが、その理由は格好良いホイールでもターボチャージャーでもなく、25km/L以上の燃費を実現できるからだ。つまり、パーティーに到着するのは誰よりも遅くなるが、その代わりビールに多くの金が使えるということだ。そして車では家に帰れないため、床で眠るはめになるわけだ。
今は変な時代であり、それに合わせるように変な車も生まれている。新型レクサス・IS300h Fスポーツだ。見た目は非常にアグレッシヴだ。分厚いアルミホイールにシャープなLEDデイライトが付いており、フロントグリルは巨大だ。この車は前の車のバックミラーに明白なメッセージを伝えている。「邪魔だ、どけ。」
内装にも同じことが言える。インテリアは最高のスーパーカーであるレクサス・LFAのコピーだ。回転式のダイヤルに必要かどうかもわからない情報、コントロールシステムを操作するためのマウス、そしてスピードカメラに近づくとまるで執事のように穏やかな咳払いをしてくれるシステムまで付いている。これはオフにすることもできる。そうする必要があるかどうかはわからないが。シートは身体にフィットして素晴らしい。収納スペースも充実しているし、トランクも十分に広い。
では、一見面白そうなこのBMW 3シリーズの対抗車はどんな車なのだろうか。日本車の電子機器とレクサスの品質が備わった、フロントエンジン・リアドライブのスポーツセダンだ。ただし…。乗り始めて4秒でこの車がスポーツセダンでないことが分かる。今の時代に合わせて作られた、お金を節約するための車だ。この車の目的はただ1つだ。燃費だ。この車はハイブリッドカーだ。
4気筒のガソリンエンジンはパワーを出すことではなく、フリクションを低減することを目的に設計されている。そして介入と離脱をシームレスに繰り返す電気モーターが付いている。そしてCVTだ。
この車は今までに運転してきたどの車とも、運転した感覚も、音も違う。エンジンの回転数が上がったかと思えばすぐに下がる。ギアチェンジの仕方も回転数には合っていない。しかもエンジン音の大きさは速度とは一切関係なく、おかげでコーナーに超オーバースピードで進入したり、あるいは逆に途方もなく遅く進入したりしがちになってしまう。
一方、ダッシュボードには意味の全く理解できない表示がたくさん並んでいる。例えば、どのモーターが駆動していているか、いつ推進力が電力に変換されたか、などを知ることができる。のんびり運転すると経済的な運転をしていると表示される。足を床まで踏み込むとエネルギーを使っていると表示されている。そんなことは言われなくても知っている。
0-100km/h加速は8.4秒と公称されており、数字としては立派だが、この車にはまったく速さが感じられなかった。高速道路でアクセルを踏み込んでみると何かが壊れているのではないかと感じた。音も変わらなければスピードも変わらなかった。
必要ならばスポーツS+モードに入れることもできるが、エンジンの回転数が上がるだけで他にはほとんど変わらない。エンジンは車を前へ進めようと吠えているのだが、実際は全く進まない。IS300hは車のように感じられる。車のように見える。しかし車のようには振る舞わず、これが実に腹立たしい。
つまり私は恐竜ということだろう。レクサスの新型車をスピードで判断した私は、今の時代では犬を文章能力で判断したようなものなのだろう。私はスピードを気にしている。フランク・ベアードもスピードを気にしている。しかしそれ以外の誰も、今やスピードのことなど気にしていないのだろう。
重要な情報がある。細いタイヤを履いた非Fスポーツモデルの二酸化炭素排出量はわずか99g/kmだ。私のような人間にとっては意味のない数字だが、高い税金のかかる社用車のドライバーなら、このおかげで随分な節約ができることだろう。
では燃費はどうなのだろうか。カタログ燃費がおよそ25km/Lというのは信じがたい。確かに街中ではハイブリッドシステムが効率性最優先で働き、どんなライバル車よりも経済的だ。ところが高速道路や開けた道では流れについていくためにはアクセルを踏み込まなければならず、結果燃費性能は落ち込むことになる。
ここで疑問が生じる。なぜレクサスは他の自動車メーカーのようにディーゼル車を作らないのだろうか。なぜモーターとエンジンを両方載せるなんてことをわざわざしているのだろうか。なぜわざわざ車重を増やしているのだろうか。なぜこれほど運転感覚のおかしい車を作ったのだろうか。答えは単純だ。レクサスはディーゼルを作れない。作り方を知らない。
しかし私はこんなことはまったく気にしない。もし私がミドルサイズ高級セダンが欲しく、燃費性能も気にしているなら、BMW 3シリーズのディーゼルを迷わずに買う。これはトルキーで速く、ランニングコストも安く、スムーズで走りも普通だ。
レクサスは未来だ。それは誰もが知っている。しかし恐竜たちはガソリン車に乗り、若者たちはディーゼル車に乗っている。我々はまだそんな未来に対応できていない。つまり、ハイブリッドカーは未だ存在しない市場に向けられた車だ。
The Clarkson review: Lexus IS 300h F Sport (2013)
今回紹介するのは、レクサス・IS300h Fスポーツのレビューです。

千年以上の間、人類はスピードを求めてきた。石器時代には最速の走者が最高の食事にありつけ、そして王となった。馬を使うようになっても同じことが起きた。チンギス・カンは、徴集した兵士に粗絹の鎧を着せ、速く移動できるようにさせたからこそ成功できた。蒸気機関の時代には、機関士たちが機関車をいかに速く走らせられるか競っており、海上では大型船が大西洋でレースを行っていた。そして冷戦の時代には最速の航空機を持つものが勝利すると考えられていた。
私が免許を取ってすぐの頃、友人とともに語り合ったのは、最速の車は何かという話だった。私は自動車雑誌を何時間も読み耽って愛車のフォルクスワーゲン・シロッコGLiがアンディ・スコットのヴォクスホール・シェヴェットHSよりも速い証拠を見つけ出そうとした。そして車に乗ればパワーを競い合ったものだ。
ところが今ではおかしなことが起きている。今やスピードが重要ではなくなってしまったようだ。コンコルドは燃費の良いボーイング787ドリームライナーに取って代わられた。HS2にはコスト面で疑問が呈されている。そして道路ではありとあらゆるものが我々を遅くしようとしている。ちょっと前には、ZZトップのドラマーであるフランク・ベアードは、誰よりも早くパーティーに到着し、誰かと一夜を過ごし、誰よりも遅く出発するためにフェラーリを購入していた。
ところが今では、10代の少年が最初に買う車について話しているのを聞くと、どうも誰もが燃費の話をしているようだ。私の息子は愛車のフィアット・プントTwinAirを随分と気に入っているようだが、その理由は格好良いホイールでもターボチャージャーでもなく、25km/L以上の燃費を実現できるからだ。つまり、パーティーに到着するのは誰よりも遅くなるが、その代わりビールに多くの金が使えるということだ。そして車では家に帰れないため、床で眠るはめになるわけだ。
今は変な時代であり、それに合わせるように変な車も生まれている。新型レクサス・IS300h Fスポーツだ。見た目は非常にアグレッシヴだ。分厚いアルミホイールにシャープなLEDデイライトが付いており、フロントグリルは巨大だ。この車は前の車のバックミラーに明白なメッセージを伝えている。「邪魔だ、どけ。」
内装にも同じことが言える。インテリアは最高のスーパーカーであるレクサス・LFAのコピーだ。回転式のダイヤルに必要かどうかもわからない情報、コントロールシステムを操作するためのマウス、そしてスピードカメラに近づくとまるで執事のように穏やかな咳払いをしてくれるシステムまで付いている。これはオフにすることもできる。そうする必要があるかどうかはわからないが。シートは身体にフィットして素晴らしい。収納スペースも充実しているし、トランクも十分に広い。
では、一見面白そうなこのBMW 3シリーズの対抗車はどんな車なのだろうか。日本車の電子機器とレクサスの品質が備わった、フロントエンジン・リアドライブのスポーツセダンだ。ただし…。乗り始めて4秒でこの車がスポーツセダンでないことが分かる。今の時代に合わせて作られた、お金を節約するための車だ。この車の目的はただ1つだ。燃費だ。この車はハイブリッドカーだ。
4気筒のガソリンエンジンはパワーを出すことではなく、フリクションを低減することを目的に設計されている。そして介入と離脱をシームレスに繰り返す電気モーターが付いている。そしてCVTだ。
この車は今までに運転してきたどの車とも、運転した感覚も、音も違う。エンジンの回転数が上がったかと思えばすぐに下がる。ギアチェンジの仕方も回転数には合っていない。しかもエンジン音の大きさは速度とは一切関係なく、おかげでコーナーに超オーバースピードで進入したり、あるいは逆に途方もなく遅く進入したりしがちになってしまう。
一方、ダッシュボードには意味の全く理解できない表示がたくさん並んでいる。例えば、どのモーターが駆動していているか、いつ推進力が電力に変換されたか、などを知ることができる。のんびり運転すると経済的な運転をしていると表示される。足を床まで踏み込むとエネルギーを使っていると表示されている。そんなことは言われなくても知っている。
0-100km/h加速は8.4秒と公称されており、数字としては立派だが、この車にはまったく速さが感じられなかった。高速道路でアクセルを踏み込んでみると何かが壊れているのではないかと感じた。音も変わらなければスピードも変わらなかった。
必要ならばスポーツS+モードに入れることもできるが、エンジンの回転数が上がるだけで他にはほとんど変わらない。エンジンは車を前へ進めようと吠えているのだが、実際は全く進まない。IS300hは車のように感じられる。車のように見える。しかし車のようには振る舞わず、これが実に腹立たしい。
つまり私は恐竜ということだろう。レクサスの新型車をスピードで判断した私は、今の時代では犬を文章能力で判断したようなものなのだろう。私はスピードを気にしている。フランク・ベアードもスピードを気にしている。しかしそれ以外の誰も、今やスピードのことなど気にしていないのだろう。
重要な情報がある。細いタイヤを履いた非Fスポーツモデルの二酸化炭素排出量はわずか99g/kmだ。私のような人間にとっては意味のない数字だが、高い税金のかかる社用車のドライバーなら、このおかげで随分な節約ができることだろう。
では燃費はどうなのだろうか。カタログ燃費がおよそ25km/Lというのは信じがたい。確かに街中ではハイブリッドシステムが効率性最優先で働き、どんなライバル車よりも経済的だ。ところが高速道路や開けた道では流れについていくためにはアクセルを踏み込まなければならず、結果燃費性能は落ち込むことになる。
ここで疑問が生じる。なぜレクサスは他の自動車メーカーのようにディーゼル車を作らないのだろうか。なぜモーターとエンジンを両方載せるなんてことをわざわざしているのだろうか。なぜわざわざ車重を増やしているのだろうか。なぜこれほど運転感覚のおかしい車を作ったのだろうか。答えは単純だ。レクサスはディーゼルを作れない。作り方を知らない。
しかし私はこんなことはまったく気にしない。もし私がミドルサイズ高級セダンが欲しく、燃費性能も気にしているなら、BMW 3シリーズのディーゼルを迷わずに買う。これはトルキーで速く、ランニングコストも安く、スムーズで走りも普通だ。
レクサスは未来だ。それは誰もが知っている。しかし恐竜たちはガソリン車に乗り、若者たちはディーゼル車に乗っている。我々はまだそんな未来に対応できていない。つまり、ハイブリッドカーは未だ存在しない市場に向けられた車だ。
The Clarkson review: Lexus IS 300h F Sport (2013)
