オーストラリア、ホールデンは大型FRセダン「コモドア」を製造しており、その最上級グレードとして6Lエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデル「SS」がラインアップされています。

今回は、豪州「CarsGuide」によるコモドアSS-Vの試乗レポートを日本語で紹介します。


Commodore-SSV

世界は移り変わり、そして自動車業界の未来にはオーストラリア産のホールデンの存在はない。

ホールデン・コモドアの最終モデルであるVFコモドアはさまざまな新技術が搭載されており、この大きなオーストラリア製セダンは同クラスの高価な輸入車とも並ぶことのできる車となっている。しかし、コモドアSS-Vに搭載されるエンジンは1960年から変わり映えしない。これは喜ばしいことだ。


デザイン
VFコモドアSSのボディパーツは従来のSSに比べれば下品さが抑えられているが、専用のフロント・リアバンパーとサイドスカート、ブラックアウトグリルが装備されている。

19インチホイールは格好良いが大きすぎることもなく、HSVコモドアのようなホットモデルというよりはあくまでスポーツモデルらしさがある。ただし、今回試乗した広報車のオレンジのボディカラーは非常に派手派手しかった。

また、大型LEDデイライトやメッキパーツ、ブレーキランプ付小型リアスポイラー、ウインカー一体型フェンダーベントなども備わる。また、4本出しのエグゾーストからは粗暴さが見て取れる。

オレンジに塗られたスタイリッシュなエクステリアデザインは数年後にもあまり古さを感じさせることはないだろう。内装は標準モデルとそれほど変わっておらず、ロゴが印字されていたり、レザーシートに専用のステッチが施されている程度で、比較的大人しい。


装備・価格設定
今回試乗したのは6速MT車で、こちらは45,990豪ドルとなり、6速ATを選択すると価格は48,190豪ドルに上がる。よりハードなFE3サスペンションやスタビリティコントロールのモード選択、ブレンボ製ブレーキなどを備えるSS-V レッドラインを選択すると、価格は5万豪ドル台に突入する。他のコモドア同様、ボディサイズは大きく、広大な室内には各種装備が豊富に備わっている。

レザーシートの質感は高く、シートの掛け心地もいい。キーレスエントリー&スタートシステムやフロント・リアパーキングセンサー、バックカメラ、MyLinkシステム付ナビゲーションシステムなども装備されている。また、AT車には電話やオーディオ、ボイスコマンド、自動パーキングアシストの操作系が備わるステアリングスイッチが付いているが、MT車では素のステアリングとなる。

安全装備としては、6エアバッグやブラインドスポットモニター、トラクション・スタビリティコントロール、トレーラースウェイコントロール、ブレーキフォースディストリビューション、ABS、バックカメラが装備されており、ANCAPでは五ツ星を獲得している。


エンジン・トランスミッション
シボレーベースのV8エンジンは6Lという大排気量のエンジンだ。この巨大で旧式的なエンジンは、もはや誰も使っていないようなオーバーヘッドバルブに固執している。これはクロスプライタイヤや4速MTの時代の技術だ。

直噴エンジンでもなければ過給器も備わっていないが、それでも最高出力367PS、最大トルク54.0kgf·mを発揮する(AT車は353PS)。最高出力はレッドゾーンから遠くない5,600rpmで発揮されるため、エンジンを回すほどにパワーが発揮されていく。6速MTは非常に素直な正確だ。


ドライビングインプレッション
SSはスポーツセダンという性格とファミリーセダンという性格をうまくバランスさせて併せ持っている。広大なトランクには5人分の荷物を載せることができるし、一般的な体型の大人なら窮屈さを感じることなく5人乗ることができる。

SS-Vのうち、MTの販売比率ははそれほど多くはないが、MTもこの車のサイズを考えれば驚くほど運転しやすい。これまでのSSはATモデルのほうが洗練された印象だったが、今回試乗したMTもそれほど粗さを感じなかった。

クラッチは寒い日には調子が悪くなるし、1速から2速への変速は時々ぎくしゃくするが、左脚がリーチが長くて重いクラッチペダルに耐えうるならばMTを選択するべきだろう。

確かに交通の激しい街中では多少疲れるかもしれないが、強大なトルクをもってすれば2速発進してゆっくり走ることも、そのまま発進加速で他の車を引き離すこともできる。また大径ブレーキは強力で足の微妙な動きにもしっかり応答してくれる。

街中の速度だとV8の低音はかろうじて聞き取れる程度の音量だが、燃費は7~8km/L程度となってしまう。乗り心地は結構良く、それでいて道が空けばパワーやハンドリングを楽しむこともできる。

加速は爆発的というわけではないのだが、この6.0Lエンジンは回りやすく、アクセルを床まで踏み込めばタコメーターの針はレッドラインまでぐんぐん振れていく。クラッチを踏んでシフトレバーを操作すると、クイックかつスムーズにギアチェンジすることができる。

V8エンジンの重さもあり、コーナーではどこか曖昧な感覚も残るが、すぐに感覚をつかむことができる。トラクションコントロールをオンにしているとリアタイヤは非常に大人しいが、オフにしてしまえばコーナーでは簡単に暴れる。

LSDのおかげでタイトコーナーを抜けた後にも十分な加速が可能だし、うまくステアリング操作をすればコーナリング時に十分なグリップを得ることもできる。コモドアのステアリングはSSも含め総じて素晴らしく、SSでは足回りはわずかに硬くなっている。とはいえ、リアシートの快適性は損なわれていない。


まとめ
VFコモドアは素晴らしい車だが、中でもSS-Vは素晴らしいスポーツセダンだ。価格帯の近い欧州ホットハッチのように、圧倒的なグリップがあるわけでも、先進的な技術がふんだんに使われているわけでもないが、それでも非常に万能な車と言える。

従来モデルのVEコモドアと比べると1万豪ドル近く安くなっており、この車の装備の充実度合いや万能性を考えても非常に安く、欧州ホットハッチに大きく勝るコストパフォーマンスを有することだろう。この車は非常に楽しく、かつ大人数を快適に乗せることもできる。

ライバルであるフォード・ファルコン XR8との戦いぶりも見ものだろう。


2014 Holden Commodore SS-V review