今回は、マレーシア「Top Gear」によるプロトンの新型コンパクトハッチバック、アイリスの試乗レポートを日本語で紹介します。


Iriz

これまでに何枚となくインターネット上にスパイショットが掲載されてきたが、ようやくプロトン・アイリスが発表された。では、この車は価格帯・サイズ共に被るライバルのプロドゥア・マイヴィに太刀打ちできるのだろうか。

ファーストインプレッションではアイリスの勝利だった。外見はあくまで主観だが、それでもプロトンは新型ハッチバックのエクステリアデザインに欧州車的な魅力を吹き込むことができているということは疑いようもない。テールのデザインはメカ的で特に面白く、ルノー・クリオとフィアット・プントの融合のようだ。マレーシアではもはやありふれたマイヴィと比べると、いい意味で目立つ。

しかし、インテリアでは、マイヴィのセールスポイントである室内空間という点で劣っている。アイリスはマイヴィよりもボディサイズは大きいにもかかわらず、マイヴィが初代モデルから持っている室内の広さに欠いている。ただ、リアのヘッドルームやレッグルームは明らかに負けているが、シートの出来はアイリスの方がよく、ロングドライブにも適している。

フロントシートに備わる装備の面ではアイリスのほうが優勢で、最上級グレードのプレミアムにはプッシュエンジンスターターやタッチスクリーンナビゲーションシステム、USB端子なども備わっている。それに、ダイハツベースのライバルと比べると走りの面で圧倒的に優れており、一番座りたい席はやはり運転席となるだろう。

Interior

マニュアルを選ぶのは大正解だ。今回は、1.3LのMTモデルと1.6LのCVTモデルを運転してクアラルンプールからペナンまでの間を往復したのだが、前者は排気量は小さいものの車との一体感は大きかった。軽いクラッチとゲトラグ製トランスミッションの高いギアレシオのせいで慣れるのには時間がかかるかもしれないが、それでも加速性能は十分に発揮してくれる。アクセルを踏み込めば車が白旗を上げるまでに150km/hに至っている。NVH性能もこの速度でさえ良く、これはこのサイズの車としては驚異的だ。

さらに驚いたのはアイリスの高速安定性だった。高速に入る前から路面の衝撃をうまくいなしており、ここからは快適性に偏重した設計になっているのではないかと感じた。しかし、高速域でも落ち着き払っており、高速でコーナーに進入しても落ち着いていた。しかし、サスペンションの出来の良さにグリップは付いて行っておらず、シルバーストーン製のタイヤは高速コーナーでしばしばスキール音を響かせた。

1.6Lモデルにはより大径のホイールが装着されるため、見た目が良くなるだけでなく接地性も改善しているが、パンチ社製のCVTはしばしばエンジンの旨味をスポイルしてしまう。それでも、プレヴェ/スプリマSの人工的な感覚からは明らかに改善しており、市街地を走る分には悪くない。しかし、加速しようとするとCVTは躊躇って唸り、1.6Lでありながら加速性能で1.3Lに対して優勢とはならない。

パフォーマンスはともかく、いずれのモデルも経済性は高い。いずれも14km/L以上の燃費を叩き出すのは容易で、燃費性能の低かったかつてのプロトン カンプロエンジンとは違う。VVTエンジンの設計改善に加えて、ZF製の電動パワステを採用することで走行性能を犠牲にせずに燃費性能を向上している。ステアリングはフィードバックに富んでおり、アイリスに楽しさを加えている。

とはいえ、日本の技術に支えられたプロドゥア・マイヴィの信頼性やプロトンのハッチバックの未熟さは無視できない。それに、マイヴィにはこのクラスの車を求める消費者の多くが求めている広い室内空間がある。ただし、アイリスはマイヴィの代替選択肢ではない。全く違った性格の車だ。マイヴィとは違い、スタビリティコントロールやABS、EBD、ヒルホールドアシスト、6エアバッグといった安全装備を備えている。

それに、アイリスはハンドリング、加速性能、乗り心地のいずれも洗練されており、うまくバランスされており、走りという面で際立っている。つまり、フォード・フィエスタやスズキ・スイフトなどの地位の確立したモデルとさえ比較することができる。さすがに、クラスをリードする存在と言うには早過ぎるものの、この車には可能性がある。これが、最近問題のあるモデルを出してきたプロトンの起死回生の一歩となるかもしれない。

どれほどの需要があるかは分からないが、お値打ちで装備が充実した、現代的なハッチバックという意味ではいい車と言えるだろう。


Quick Take: Proton Iriz 1.3 MT & 1.6 CVT