セアトはフォルクスワーゲングループに属するスペインの自動車メーカーです。以前にセアトのBセグメントホットハッチ、イビーサ クプラの試乗レポートを紹介しましたが、今回は同じイビーサの中でもクプラの下に属するスポーティグレード、イビーサFRの1.2 TSIの試乗レポートを日本語で紹介します。


IbizaFR

混戦を極めるBセグメントにおいては、目立つための何か特別な要素が必要だ。フォルクスワーゲン・ポロには上級感があるし、プジョー・208は快適性の面で秀でている。そしてもしスポーティさを求めるなら、セアト・イビーサ以外ないだろう。

このスペイン製コンパクトは2012年はじめにマイナーチェンジを受け、ホットハッチモデルのクプラを除けばイビーサFRがフラッグシップグレードとなる。イビーサFRには3ドアと5ドア、それにステーションワゴンのSTが初めて設定され、四種類のエンジンが用意される。TDIディーゼルエンジンとしては1.6Lと2.0Lが、TSIガソリンターボエンジンとしては1.2Lと1.4Lが設定される。今回試乗したのは1.2Lガソリンターボエンジンを搭載する5ドアハッチバックモデルだ。

ファーストインプレッションは良好だ。新デザインのフロントフェイスはイビーサをよりシャープな印象としているし、試乗車に装備されていたオプションのLEDデイライトもアクセントとなっていた。また、試乗車にはオプションの17インチアルミホイールも装着されており、これ以外にも外装オプションとしてはメッキドアハンドルやメッキドアミラーも設定される。

インテリアでは、ダッシュボードが改良されており、平板なプラスティックに溢れていたダッシュボードはより抑揚のあるデザインに変わっている。FRにはスポーツシートや本革フラットボトムステアリングが標準装備となり、快適性も高い。従来のイビーサの大きな問題点として挙げられたのが操作性の悪いオーディオだったが、これはマイナーチェンジでも変わっていない。オーディオの片側にダイヤルが1つ配され、周囲にはボタンが並んでおり、ステアリングの後ろにも操作部があるのだが、直感的な配置ではなく、スクリーンのメニューに慣れるためにも時間がかかる。

interior

走りにはそのような問題はない。イビーサFRは快活で、1.2L TSI ガソリンターボエンジンはFRのスポーティな性格に合っている。105PSのこのユニットのスロットルレスポンスは即時的だし、17.8kgf·mという最大トルクのおかげで追い越し加速にも余裕がある。5速MTも正確だが、ただこのパワートレインに対する唯一の小さな不満は、トランスミッションが5速であるという点だ。6速であれば高速でのクルージングはさぞ快適だろう。

スポーティーなサスペンションセッティングのおかげで、コーナーでは安定していてグリップも十分にある。一方で街中では硬さが感じられるが、従来モデルよりはその点で改善されている。

ただ、1.2 TSIを搭載するイビーサFRの一番の長所は、スポーティでありながらランニングコストも安いという点だ。アイドリングストップは備わっていないとはいえ、23.6km/Lという燃費はディーゼルと同等だし、119g/kmというCO2排出量の低さのおかげで税額も安くなる。


イビーサFRはランニングコストが安い車でも楽しめるということを証明している。1.2L TSIエンジンの応答性の高い性質はFRのスポーティさと完璧にマッチしており、まさにこの車のために作られたエンジンのようだ。このため、1.4Lモデルやディーゼルモデルの存在などなくてもいいようにすら思えてしまう。


SEAT Ibiza FR 1.2 TSI Road test