前々回、6.2L スーパーチャージドエンジンを搭載するハイパフォーマンスセダン、ダッジ・チャージャー SRT ヘルキャットを紹介しましたが、チャージャーには、ヘルキャットの下のグレードとして、6.4L 自然吸気エンジンを搭載する「392」もラインアップされています。

今回は、ダッジ・チャージャー SRT 392の試乗レポートを日本語で紹介します。


392

ダッジはワシントンD.C.の車庫に我々を招待し、マイナーチェンジを受けた2015年モデルのチャージャーのフルラインアップの試乗を許してくれた。その際、我々はまず最初に新たに設定された717PSのトップグレード、チャージャー SRT ヘルキャットを試乗することもできた。しかし、我々はあえて、SRT 392を最初に試乗するモデルとして選択した。なぜなら、世界で最もパワフルな市販セダンに乗った後では、もはや492PS程度では満足できなくなってしまうのではないかと考えたからだ。ただ、実際のところ、それは杞憂に終わった。

392の自然吸気 6.4L HEMIエンジンを始動させ、建物中に響き渡る音を聞くと、ヘルキャットは楽しさというものをいくらか犠牲にしてしまったのではないかと思い始めた。なにより、こんな音を響かせる車が悪いはずがないじゃないか。

1kmと走らないうちに、65.7kgf·mというトルクに酔いしれ、思わず笑ってしまい、過去に乗ってきたこの車よりパワーのない車たちが小さく思えた。また、テストを行う予定のサーキットがあるウェストバージニア州のサミットポイントモータースポーツパークに赴くまでに、果たして自分の免許が無事だろうかと、思わず口に出してしまった。

そして、我々は周辺住民を脅かすのをやめ、大人らしく、車を冷静に評価することとした。ステアリングの感触はいい。乗り心地は、路面状況を知るには十分だし、以前にマイナーチェンジ前のモデルをシボレー・SSと比較した際に感じた乗り心地の酷さも顕著に改善しているのが感じられた。ナビのSRTパフォーマンスページ機能というものを使えば、ステアリングを重くすることもできた。これによってセルフセンタリング性は向上し、筋力トレーニングにもなりそうだが、それだけだ。ビルシュタイン製のショックアブソーバーの硬さも調節することができた。スポーツモードとすれば接地性が向上したが、トラックモードにまでしてしまうと街乗りでは硬すぎると感じた。

パワートレインのセッティングも変えることができる。ストリートモードでは完璧に大人しく、トラックモードでは高回転まで回り、素早くなり、テールハッピーとなった。後者のモードでは、スロットル感度が上がり、8速AT(マイナーチェンジ前の5速ATから変更されている)による変速も回転数に応じてほとんど瞬時に行われ、スタビリティコントロールの介入も少なくなっている。そしてエグゾーストサウンドは地獄のような、否、もっと正確に言えば「ヘルキャット」のような音へと変貌する。チャージャー SRT 392とヘルキャットは直管エグゾーストシステムや電動エグゾーストバルブ、センターマフラーを共有しており、チャレンジャー SRTよりも室内に届くサウンドがより洗練されている。ダッジによると、背圧は変わっていないため、パフォーマンスへの影響はないそうだ。それでもチャージャーのサウンドは迫力に満ちている。にもかかわらず、クルージング時は静かだ。

また、強力なブレーキもヘルキャットと共有しており、フロントブレーキは15.4インチのディスクにブレンボ製6ピストンキャリパーが組み合わせられており、マイナーチェンジ前のモデルの、4ピストン・ディスク径14.2インチから向上している。リアブレーキは、マイナーチェンジ前と変わらず、13.8インチのディスクにブレンボ製4ピストンキャリパーが組み合わせられる。この恩恵はサミットポイントに到着した後(免許はなんとか無事だった)で明らかになった。0-100km/h加速は4秒台前半と推測され、アクセルペダルを踏み込む度に顔面が変形しそうになる。

初めからがSRT 392がヘルキャットにスリルで敵わないということは分かっていたが、それでもこの車がつまらないというわけでは全くない。サーキットのストレートではスピードメーターは210km/hを超え、これはヘルキャットの240km/h超という数字には劣るものの、それでもこのサイズの車としては圧倒的に速い。それよりも着目すべきは、SRT 392とヘルキャットの間に、グリップやステアフィールの差があまりないという点だ。後者については、392は電動パワステを、ヘルキャットは油圧パワステを採用しているため、違いは明らかだ。ただ、392に装着されていた275/40R20 ピレリ P ZERO スリーシーズンタイヤはグリップに富んでおり、またトラックモードは非常にアグレッシヴだという点は賞賛に値する。

この車は2,000kg近いフルサイズセダンだ。しかも、マイナーチェンジ前のモデルからおよそ20kg車重が増加している。ただ、前後重量配分はヘルキャットの56:44よりも自然な54:46となっており、バランスでは勝っている。

どんなに巨大であろうと、これまでのチャージャーは内外装のデザインで良いとはいえなかった。しかし、ダッジいわく新型ではその点はかなり改善されていると主張している。そのためには、見た目の大きさを感じさせないため、バンパーの角をとり、ノーズの高さを低くし、Cピラーを延長したという。実際、ルーフおよびリアドアを除くボディパネルはマイナーチェンジですべてが変更されている。ヘルキャットおよび392はSRTモデル専用のノーズとなり、迫力がありながらもクリーンなフロントフェイスとしており、またリアバンパーにはディフューザーが備わり、直径4インチのデュアルエグゾーストも備わる。インテリアも同様に改善が施され、高級感が高められたほか、SRTモデルにはグリップの太いフラットボトムステアリングやサポート性の高いフロントシートが装備される。

チャージャー SRT ヘルキャット同様、392にもライバルは少ない。最も近いライバルは上でも少し言及したシボレー・SSで、このモデルは最高出力421PS、最大トルク57.4kgf·mを発揮し、392には最高出力で71PS、最大トルクで8.3kgf·m劣るものの、車重は180kg以上軽い。それに、SSには6速MTが設定されるという強みがある。ただ、チャージャーの新しいインテリアも、この5万ドル未満のこれら2台のうちでどちらがいいかを選択する上で重要となってくるだろう。

392の48,380ドルという価格は、64,990ドルのヘルキャットよりも16,610ドル安い。また、40,990ドルのチャージャー R/T スキャットパックには、392同様6.4LのSRTエンジンが搭載され、8速ATも備わるが、SRT専用インテリア・専用エクステリアではなくなり、アジャスタブルサスペンションも備わらない。この辺りは好みや予算によって決めるべきだろう。392とヘルキャットの直接比較はしていないが、その結果がどうあれ、この車は単なる敢闘賞では終わらないだろう。


2015 Dodge Charger SRT 392 First Drive