2014年12月、トヨタが燃料電池車「MIRAI」を発売して大きな話題となりましたが、米国ではそれに先立って、2014年6月より韓国ヒュンダイが燃料電池車「ツーソン フューエルセル」のリース販売を開始しています。

今回は、米国「Car and Driver」によるツーソン フューエルセルの試乗レポートを日本語で紹介します。


Tucson Fuel Cell

燃料電池車(FCV)は電気自動車の環境性能とガソリン車の給油の利便性を兼ね備えた理想的とも言える車だ。しかし、近年まではホンダのFCXやFCXクラリティのような路上実験車両を例外として、FCVは未来の乗り物であると考えられ続けてきた。

3年リースのモデルのみが設定されるヒュンダイ・ツーソンはFCVをより身近なものとしている。ツーソン フューエルセルに乗るためには毎月の利用料499ドル+頭金2,999ドルが必要だ。クロスオーバーが人気のカリフォルニアでは、州により頭金が全額支払われ、さらに5,000ドルの補助金も交付される。つまり、実質月額443ドルで乗ることができる。さらに、燃料費はヒュンダイが負担することとなっている。これは消費者にアピールするためということもあるが、国の奨励金がメーカーに直接交付されているというのも理由の1つかもしれない。

ヒュンダイによると、燃料電池技術にかかるコストはここ15年で40%削減できているという。それでも、燃料電池は高価で、この一因としては、燃料電池のプロトン交換膜に白金が用いられることが挙げられる。簡単に言うと、燃料電池は水素と空気との電気化学反応により電気を発生させる。高圧タンクに貯蔵された水素原子は膜を透過することで電子を失い、モーターを駆動させる電力を発生する。膜の反対側に存在する空気と水素イオンが結合することで発生する水はテールパイプから排出される。

水素は宇宙で最も多く存在する元素とも言われているが、地球上でそれを単体として取り出すのは難しい。燃料電池車が発生する温室効果ガスの総量は、燃料の製造方法によることとなる。

水素を作り出す方法はいくつかあるが、中でも最も簡単な方法は電気分解だ。再生可能エネルギー由来の電気を用いて電気分解された水素が水素ステーションに運搬されて用いられた場合、燃料電池車が発生する温室効果ガスは、電気自動車(発電源は様々)のおよそ半分と言える。

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しかし、多くの場合、水素は天然ガスから抽出されて運搬されるため、そのアドバンテージはなくなってしまう。

水素の製造方法がどうであれ、水素ステーションを見つけるのは難しい。カリフォルニア州ロサンゼルスには6つの公共ステーションが存在するが、アメリカの多くの地域には1つも存在しない。2016年内までにカリフォルニアの水素ステーションは48箇所となる予定だ。しかし、現時点では、ヒュンダイ・ツーソン フューエルセルはロサンゼルスの一部地域やカリフォルニア州オレンジ郡でしかリースできない。

ツーソン フューエルセルの運転感覚は電気自動車のそれと全くと言っていいほど変わらない。最高出力136PS、最大トルク30.6kgf·mの交流モーターは1,880kgのツーソンを停止状態から力強く引っ張るが、50km/hを超えると加速が次第に弱まっていく。モーターも燃料電池も静かだし、1速のトランスミッションは何の問題もなく働く。しかし、搭載されるパワートレインの目新しさを除けば、この車には面白さがあまりない。

ツーソンの2つの水素タンクを空の状態から満タンにするまでにはおよそ10分かかる。リアアクスルを跨ぐように配置された2つのタンクは5.62kgの水素を10,000psiで貯蔵し、航続距離は公称で426kmとなる。床下に搭載される0.95kWhのバッテリーはソナタハイブリッドのものを用いており、燃料電池が産生した電力を安定的にモーターに供給する役割を担っている。

ツーソン フューエルセルは誰でもリースできるわけではない。水素ステーションの近くに居住しているか、航続距離426kmに適った運転習慣であるか、未成熟の技術を備えた車を運転するに耐えうるかなどといったことが審査される。

また、426kmという航続距離は十分に思えるが、往路だけではなく復路まで考えて運転する必要がある。水素ステーションが増えれば、燃料電池車には電気自動車に挑めるだけのポテンシャルがある。ただ、今のところ、この車はララ・ランド(カリフォルニア州ロサンゼルス周辺の先進地域)の車でしかない。


2015 Hyundai Tucson Fuel Cell First Drive Review