今回は、英国「Auto Express」による、フォルクスワーゲンのミドルバン、トランスポーター(トランスポルター)の試乗レポートを日本語で紹介します。


transporter

フォルクスワーゲン・T5こと5代目トランスポーターは2種類のホイールベース長と3種類のルーフ高が選択可能な素晴らしいミドルサイズバンだ。エンジンは2.0L TDI コモンレールディーゼルエンジンの1種類しか設定されないが、5種類の出力の違うバージョン存在する。このうち、84PS、101PS、114PSのバージョンは5速MTを介して前輪に動力が伝達され、140PSおよび178PSのバージョンは6速MTが標準で組み合わせられ、フォルクスワーゲンのデュアルクラッチトランスミッションであるDSGがオプションで設定される。また、これら2バージョンの高出力エンジン搭載車には4WDモデルである4MOTIONも設定される。84PS、114PSのバージョンには排出性能や燃費性能を向上するBlueMotionテクノロジーもオプションで選択でき、114PSのトランスポーターBlueMotionは19km/Lの燃費とCO2排出量166g/kmを実現している。

フォルクスワーゲン・トランスポーターコンビには折り畳み可能な2列目シートがついており、またトランスポーターシャトルは9シーターのピープルムーバーだ。フォルクスワーゲンの最新モデルのキャンピングカーであるフォルクスワーゲン・カリフォルニアもトランスポーターをベースとしているが、予算によっては普通のトランスポーターバンを買って自分で改造したほうが安上がりだ。また、用途に応じて架装できるトラックの裸シャシモデルや、ダブルキャブピックアップトラックなどもラインアップされている。上級グレードのSportlineはオーナードライバーにも十分で、メルセデス・ベンツ ヴィトー スポーツXやフォード・トランジット スポーツバンと競合する。


燃費・ランニングコスト
トランスポーターは全モデルに2.0Lのディーゼルエンジンが搭載され、どの出力のモデルを選ぶかにもよるが、燃費性能は非常に高い。84PS、114PSのモデルにはBlueMotionテクノロジーパッケージを付けることができ、燃費性能とCO2排出量が改善する。このパッケージには低転がり抵抗タイヤやクルーズコントロール、アイドリングストップシステム(停止時およびニュートラル時にエンジンが停止し、クラッチを踏むと再始動する)が含まれる。また、減速時やブレーキング時にはオルタネーターのはたらきが強くなる。これは普段使用する電気をバッテリーにチャージするシステムで、加速時の負荷を減らしている。

燃費を第一に考えるバンユーザーのためのモデルとして、114PSエンジンを搭載したショートホイールベース・ロールーフのトランスポーターBlueMotionもラインアップされる。これは通常のBlueMotionテクノロジーパッケージ付モデルよりも軽量で、また空力性能も向上されており、19.0km/Lの燃費性能を実現している。これは17.6km/Lの114PS BlueMotionテクノロジーパッケージ付モデルや16.0km/Lの通常の101PSのモデルと比較すれば燃費性能は優れているが、ただ19.7km/Lの燃費性能を実現しているフォード・トランジット カスタム ECOneticには劣る。CO2排出量も低く、トランスポーターBlueMotionは166g/kmを実現しているのだが、こちらもフォードの162g/kmには劣ってしまう。


荷室・実用性
2種類のホイールベース長と3種類のルーフ高が設定されているため、荷室容量は5.8立方メートルから9.3立方メートルとなり、フォルクスワーゲン・キャディの上位モデルやフォルクスワーゲン・クラスターの下位モデルともオーバーラップする。また、コンビ(ワゴン)やマイクロバスのほかに、シングル・ダブルキャブの裸シャシモデルも設定されるため、ピックアップトラックとしたり、ダンプトラックとしたりすることも可能だ。

標準モデルのトランスポーターバンは十分にコンパクトなので街乗りも苦なく行えるが、ボクシーなボディ形状により、ショートホイールベースモデルはユーロパレットを2つ、ロングホイールベースモデルは3つ積載することができる。566mmというフロア高の低さはフォード・トランジットカスタム(534-583mm)やメルセデス・ヴィトー(556-562mm)とも十分競争力を有している。また、4WDモデルの4MOTIONでも荷室高は変わっていないが、ただし最大積載量は少なくなっている。とはいえ、4WDの悪天候時の走破性や悪路走破性を考えれば、この程度は大した問題とはならないだろう。

運転席と荷室を隔てるバルクヘッドはTrendlineとHighlineでは標準装備となるが、ベースグレードおよびSportlineでは165ポンドのオプションとなる。とはいえ、荷物から乗客を守り、同時にリアからの騒音を防ぐために、このオプションを選ぶ価値はある。リアの観音開きドア、もしくはオプションのテールゲート、それにサイドスライドドアのおかげで、荷室へのアクセスは容易だ。ラッシングリング(荷物固定用のリング)は6つ(ロングホイールベースモデルは8つ)備わっており、また荷室サイドの下半分は荷室から保護するため、ハードボードで覆われている。ゴム製の荷室カバーはショートホイールベースで125ポンド、ロングホイールベースで145ポンドのオプションで、また荷室サイドのレールはそれぞれ300ポンド、400ポンドのオプションとなる。最大積載量は740-1,340kgとなる。


安全性
全グレードにスタビリティコントロールは標準装備となる。これはABSやTCS(トラクションコントロールシステム)と協調して作動し、横滑りを防止する。4WDモデルの4MOTIONは140PSおよび178PSのモデルのみに設定され、2,200ポンド高となる。これを選択すれば走行安定性や悪路走破性が確保され、燃費も1km/Lほどしか悪化しない。全モデルにデイライトや運転席・助手席エアバッグ、集中ドアロックなどは標準装備だ。また、坂道発進時に数秒間自動でブレーキをかけ、後退を防ぐヒルホールドアシストも標準装備となり、急ブレーキ時に警告のためにハザードランプを自動的に点灯するシステムも備わっている。



走行性能
最下級の84PSエンジンでも、トランスポーターは運転しやすく、出力の高いモデルを選べばさらなるパワーを得ることができる。事実、178PSのBiTDIツインターボモデルはパワー過剰とも言えるレベルで、制限速度を守るためにはアクセルを優しく踏む必要がある。マニュアルトランスミッションも良いが、低出力モデルは5速MTしか設定されない。高出力モデルには6速MTが設定され、優秀な7速DSGも選んで損はないだろう。ただ、こちらは1,400ポンドのオプションと安くはない。トランスポーターのハンドリングは確実で、また長距離の高速走行も街乗りも能力は同等に高い。4MOTIONを選択しても、普段の運転で違いを感じることはなく、いざ雪道や凍った道に出れば、その能力を発揮してくれる。


インテリア
他のフォルクスワーゲンのモデル同様、インテリアの作りはしっかりとしており、使われているプラスティックは硬く、またシートも硬いが、それでも快適だ。収納スペースも多く、助手席・中央席のシート下にも収納スペースが用意されている。中級グレード以上には荷室と居住スペースを隔てるバルクヘッドが装備されるが、これが装備されない下位グレードでも、荷室スペースからの騒音を防いでくれるので、オプションとして装備する価値はある。TrendlineにはBluetooth接続機構やAUX端子、リアパーキングセンサー、クルーズコントロール、運転席アームレストなどが装備され、Highlineにはさらにセミオートエアコン、本革ステアリング、本革シフトレバーなどが装備される。最上級グレードのSportlineにはツートンレザーシートやKENWOODマルチメディアシステム付カーナビゲーションシステム、フロアマット、ローダウンサスペンションや、そのほか種々のエクステリアパーツが装備される。低級グレードではエアコンが785ポンドのオプションとなり、またサイド・カーテンエアバッグも250ポンドのオプションとなる。HighlineとSportlineにはコーナリング機能付のフォグランプが標準装備されるが、ベースグレードおよびTrendlineでは270ポンドのオプションとなる。


Volkswagen Transporter In-depth review