インドの自動車メーカーとしては、タタが有名ですが、スズキ傘下のマルチスズキ、そしてタタに次ぐインド第三位の自動車メーカーとしてマヒンドラがあります。同社は主にSUVや商用車などを製造しており、一時はルノーとの提携も行っていて、現在では韓国サンヨンの親会社でもあります。

今回は、インド「Top Gear」によるマヒンドラの中型SUV「スコーピオ」の試乗レポートを日本語で紹介します。


Scorpio

従来型のマヒンドラ・スコーピオの最大の問題点を挙げろと言われたら、高速走行時の衝撃のいなし方だった。高速道路で凹凸に乗り上げたらまるでトランポリンに乗っているかのような挙動をした。もっとも、この車は高速向けの車ではなく、悪路を走るための車だと指摘する人もいるかもしれないが。では、新型ではどう変わっているのだろうか。

今回ここで取り上げるのは2014年9月に登場したマヒンドラの人気SUVの3代目に当たるモデルだ。このモデルには強化されたプラットフォームが採用されており、マヒンドラいわくクラッシャブルゾーンを新たに加えたことにより安全性も向上しているという。この新設計のシャシはほかのマヒンドラの新型車にも採用されていく予定だ。マヒンドラによると、このプラットフォームは4m以下のモデル(マヒンドラ・クワントの後継車だろうか)にも構造的に完全な状態で採用することができるという。新型スコーピオではあらゆるものが新設計となっている。ナーシク工場の担当者によると、従来モデルからキャリーオーバーされた部品はドアだけだという。

「Scorpio」の車名ロゴはボディのあちこちに装着されている。エクステリアデザインには上級SUVであるマヒンドラ・XUV500との共通項がいくらか見られる。猫の引っかき傷のようなフロントグリルやフロントバンパー、大きなホイールアーチ、テールランプなどはXUV500に似ている。フロントフェイスはヨーロッパ的なデザインとなっているが、一方でサイドのデザインは従来モデルと大して変わっていない。リアも同様にそれほど変わっておらず、新たにリアはツートンカラーになっているのだが、これはどこか後付っぽくも見える。

新型スコーピオには2WDモデルと4WDモデルが設定され、後者には副変速機が備わる。グレード構成は下からS2, S4, S6, S6+, S8, S10の6グレード構成となる。今回試乗したのは最上級グレードのS10であり、このモデルには様々な装備が備わっていた。試乗車にはデュアルプロジェクターヘッドランプの上に配されるLEDデイライトやボンネットエアスクープ、エクステリアメッキパーツ、アイドリングストップ、ABS、タイヤ空気圧センサーなどが付いていた。また、室内には、デュアルフロントエアバッグ、タッチスクリーン式6インチナビゲーションシステム、後席用吹出口付エアコン、ツートーンシートなどが装備される。

新型スコーピオはあらゆる操作系が手の届く範囲内にまとまっており、使いやすい設計となっている。新設計のブルーのアナログメーター(一部デジタル表示)の見た目は非常によく、そこにはスピードメーター、オドメーター、燃料計、水温計、トリップメーター、ギア表示が配されている。

interior

ただ、新型スコーピオには問題点もある。運転席のドアを閉めてしまうと、シートの高さ調節ができなくなってしまうし、ドアロックは優しく操作しないと壊れてしまいそうで品質が疑わしい。

スコーピオにはマヒンドラ・ザイロと共通の5速MTが採用されており、最終減速比がわずかに変更されている。ステアリングはXUV500と共通で、メッキパーツに囲まれたエアコン吹出口など、インテリアの一部もXUV500と共通化されている。全体的に見て内装の仕上がりは従来モデルからは大きく進歩しており、インテリアの居心地も良くなっている。旧型同様地味ではあるが、それでも使っているプラスティックなどが変わったことによりそれなりには活き活きとしている。今回は4WDモデルの試乗はできず、2WDモデルのみの試乗となった。フロントのダブルウィッシュボーン式サスペンションは完全新設計であり、リアにはマルチリンク式サスペンションが採用される。乗り味は低速では従来モデルと大して変わらず、サスペンションが衝撃をうまく吸収してくれる。高速では以前よりもわずかに安定感が増しており、急ブレーキを掛けた際のピッチングが減っている。新型になって一番変わった点は、リアにスタビライザーが追加されたことにより、ハードなコーナリングが少し快適になったという点だ。新設計のアルミホイールは従来モデルの16インチから1インチアップしており、悪路走破性が高まっている。搭載される2,179cc 4気筒mHawk直噴ターボディーゼルエンジンはマヒンドラのほかのモデルにも搭載されており、この122PS/28.6kgf·mのユニットは十分な仕事をしてくれる。ベースグレードのS2には15インチホイールが装着され、最高出力76PS、最大トルク20.4kgf·mを発揮する2,523ccのm2DICR直噴ターボディーゼルエンジンを搭載する。

全高とホイールベースは旧型モデルと全く同じだが、全長や全幅は伸びている。シャシは刷新されているが、車重は変わらず、2WDモデルで2,510kg、4WDモデルで2,610kgとなる。ただ、マヒンドラによると燃費性能は従来モデルの14.7km/Lからおよそ1km/L向上しているという。

従来モデルのデザインに慣れ親しんだ人間からすると、新型のデザインは現代的な車に対する讃歌にも思えるが、それ以上のものがこの車にはある。新型は現代的になって、シャシを刷新することでより安定感のある車となった。ステアフィールも、乗り心地も良くなっている。大きな変化とまでは言えないが、それでも従来モデルから確実に進歩している。


Review: New Mahindra Scorpio