今回は、ルノーが2014年にインドで発表したコンパクトSUVのコンセプトカー「KWID」のインド「NDTV」による試乗レポートを日本語で紹介します。


Kwid

モータージャーナリストでもコンセプトカーを見る機会というのはそうそう多くないし、コンセプトカーを自分で運転できる機会などもっと少ない。ましてやインドでそんな機会があるなんて、夢ではないかと疑いたくなるレベルだ。

ルノーは新型コンセプトカーのクウィッドをデリーで開催されたオートエキスポ2014で発表した。ルノーがヨーロッパ以外でコンセプトカーを発表したのは今回が初めてで、異例のことと言える。ましてや発表の場にインドが選ばれたとなればなおのこと理由がよく分からない。クウィッドのデザインはどう見てもコンセプトカーであり、それなりにプロポーションが強調されている。ただ、このデザインスタディにはメッセージが隠されている。クウィッドは今後のデザインの方向性や開発に取り組んでいるモデルの概略を示している。この車はデューンバギーとSUVの間の子のような車で、全長は4m以下だ。つまり、インドの規格では「スモール」クラスに含まれるため、課税率が下がる。4mをわずかに超えるフォード・エコスポーツが以前に問題になったが、インドで売り上げを伸ばそうとしているあらゆる自動車メーカーがこのクラスに車を投入しようとしている。ルノーには既にコンパクトSUVのダスター(他の市場ではダチア・ダスターとしても販売される)があるが、エコスポーツの価格設定や魅力には後れを取っている。

この車のグレーとイエローのボディカラーはルノーらしいと言うよりはむしろインド風だ。クウィッドのデザインチームはフランス人、ブラジル人、そしてインド人のデザイナーからなり、各国のデザインセンターでそれぞれがインテリアからエクステリアデザインから様々な部分のデザインを行っている。ボディカラーやエクステリアパーツの一部を担当したデザイナーがネハ・ラッドで、彼女によるとグレーはインドの風景や大地を表し、イエローはインドのスパイスやマリーゴールドといった花を表しているという。インテリアデザイナーはこちらもインド人のミシュ・バトラで、インド人の要求に応えた設計を行っており、この車をオーソドックスな5シーターとしているが、フロント3人、リア2人乗りにするという奇抜なことも行っている。この車の外観からは室内が広そうには見えない。しかし、ルーフラインが低いにもかかわらず、室内は驚くほど広大だ。このコンセプトカーのシートは格子状のフレームで覆われており、おかげで通気性が確保されている。これは暑い気候に向いたシートであり、これもインドらしい部分といえる。運転席は前席の中央に配置されており、ステアリングも中央にある。こういった奇抜さはコンセプトカーにはつきものだ。ドアミラーの代わりにカメラが付いており、この映像はダッシュボードの上部に映し出される。操作系は未来的だ。

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クウィッドに搭載されるのはルノーの1.2L H5Ft型3気筒ガソリンターボエンジンで、最高出力は122PSを発揮する。これはルノー・クリオ(日本名: ルーテシア)やキャプチャーに既に搭載されているユニットだ。このエンジンにはアイドリングストップが標準で備わっており、ルノー最新のEDC(エフィシェントデュアルクラッチ)トランスミッションが組み合わせられる。このコンセプトカーは2WDモデルとして開発されており、価格競争の激しいこのクラスの実情に合わせられている。ただ、興味深いことに、クウィッドはバッテリーを搭載できるようにも設計されており、リアには充電ポートが設置できるように設計されているため、電気自動車化も可能なようだ。

この車を運転する際には、私は大した期待をしてはいなかった。というのも、この車は走行可能とはいえ、あくまでコンセプトカーなのだから。事実、この車は走らせると振動が大きく、またボディは進むたびに軋んで音を立てた。それに舗装の悪い道を走ればまともに対処してくれなかった。ただ、前述の通りこの車はコンセプトカーなのだからある程度は仕方ないといえる。この車で感心したのは、操縦のしやすさや回転半径の小ささ(またショートオーバーハングなのでより取り回しがしやすい)、そしてパワートレインの応答性の高さだ。1.2Lエンジンもトランスミッションも常に準備万端といった感じだった。これは良い兆候と言えるが、ただ市販モデルがどうなるかはまだ知りようがない。ただ、1つ言えるのはこのコンセプトカーは運転して楽しい車だったということだ。ギアチェンジのためにボタンを押したり、ドアミラーの代わりにカメラの映像を見たり、道行く人々が私の運転する車に釘付けになる様子を見たりといった経験は、非常に素晴らしいものであった。

この車は小型のカメラ付きの遠隔操作ヘリコプター「フライング・コンパニオン」とともに開発されており、このヘリカメラは車の屋根の上から飛ばすことで、前方の交通状況や道路状況をあらかじめ偵察することができる。これはまさにコンセプトカー的なギミックではあるが、今回の試乗時にはさすがにヘリカメラも同伴というわけには行かず、このヘリカメラはオートエキスポ終了後はフランスへと戻っている。

ただ、電動開閉式のガルウイングドアのボタンを押すと(この車は右ハンドルでも左ハンドルでもないため、どちらのドアからも出ることができ、なかなか面白かった)、この車がコンセプトカーだということが改めて身に沁みて分かった。インドで発表され、全長4m未満で、インドでデザインされ、インド市場のことが考えられたこの車は、小さな車でありながらインドでは大きな存在となりそうだ。インドではディーゼルエンジンが栄えるか廃れるかどっちつかずなところがあり、この小さなガソリンエンジンにはインド市場で大きなポテンシャルがあるのではないかと思う。3気筒のH5Ft型エンジンはルノーと日産のエンジン系列に属する(ルノーはH系、日産はHR系と呼称している系列だ)。これらは多くが日産車に用いられているが、ルノーのモデルも次第に搭載車を増やしている。例えば、これ以外にもこのエンジン系列には4気筒1.5Lエンジンなども存在する。

つまり、この車の可能性は大きいと言えよう。ルノーはインド市場のシェアを伸ばそうと躍起になっており、インドに合わせた車の開発を行っている。そして今回、私がインド人ジャーナリストで初めてクウィッドを運転することができたということは誇りに思う。このあと、この車がフランスのルノー本部に戻っても、このコンセプトカーを運転できるフランス人ジャーナリストはほとんどいないそうだ。


First Drive: Renault KWID Concept