今回は、豪州「CarAdvice」によるホールデン・コモドアLPGの試乗レポートを日本語で紹介します。

ホールデン・コモドアにLPG車が追加された。LPGモデルはコモドアのセダン、スポーツワゴン、ユート(ピックアップトラック)、それにコモドアのロングホイールベースモデルであるホールデン・カプリスのすべてに設定され、ホールデンはこのモデルにより代替燃料に対するイメージを変えようとしているようだ。
オーストラリアには3,300を超えるLPGステーションがあるので、燃料調達に関する心配はほとんどないだろう。現在オーストラリアでLPGを燃料とする車は5%程度だが、ホールデンはこれを10%から最大で20%まで伸ばせるポテンシャルがあると考えている。
最高出力245PS、最大トルク32.6kgf·mを発揮するLPG 3.6LのEURO6適合V6エンジンは、競合車であるフォード・ファルコンEcoLPiと比べると出力で26PS、トルクで9.1kgf·m低い。パワーで劣っているのはひとつ問題になるし、ファルコンにはLPGの噴射方式として先進的な液体噴射方式 (LPI) が取られているのに対し、コモドアには従来的な気体噴射方式 (VPI) が取られているのも問題となる。
ホールデンによると、元々はLPIでコモドアLPGの開発を進めようとしていたのだが、このシステムではCO2排出量や燃費性能の目標を達成できないと判断されたという。ホールデンの後輪駆動車開発マネージャーであるブライアン・マクマリー氏は、この車の発表時に豪州メディアに対し、この目標を達成できるのはVPIだけだったと話している。また、彼はVPIではパワーやトルクの面ではLPIに敵わないが、他の面では利点があるとも付け加えた。
ホールデンはVPIの方がオーストラリアの環境に合っていると考えている(もっとも、ホールデンのハイパフォーマンスディビジョンであるHSVはLPIのモデルを製造しているが)。VPIはより構造が単純であり、暑い環境下でも安定して使用することができる。ホールデンはコモドアLPGのために130万kmにわたるテストを行ってVPIシステムの調整を行い、独自の噴射装置、燃料レール、フィルターを開発している。
また、ホールデンのマーケティングチームはコモドアLPGを幅広い層に向けてアピールしていくと宣言しており(そのため様々なボディタイプやグレードがラインアップされている)、ターゲットはパワーやトルクを重視する層ではなく、ランニングコストや排出性能、燃費に興味のある層にターゲットを置いている。
84.4Lのアルミ製燃料タンクを備えているため、LPGのコモドア「Omega」は満タン給油で710km走行することができる(「Omega」および「Berlina」グレードの燃費は8.5km/Lとなり、これ以外のグレードのセダンモデルやスポーツワゴン、ユートの燃費は8.1km/Lとなる)。この航続距離はトヨタ・オーリオンAT-X(707km)やマツダ3(日本名: アクセラ; 696km)、そしてフォード・ファルコンXT(687km)にも勝る。また燃費性能はファルコンEcoLPiにも勝っている。それに、年間平均走行距離20,000kmと考えると、コモドアの燃料代は年間およそ1,227豪ドルと想定され、これはよりパワフルなファルコンEcoLPi(1,279豪ドル)とはそれほど変わらないものの、トヨタ・カムリハイブリッド(1,644豪ドル)やトヨタ・カローラ(2,028豪ドル)と比べるとかなり安い。
ここ数ヶ月でヨーロッパでのLPG需要が高まっているため、オーストラリアのLPG価格も高騰している。それでもホールデンはLPGの価格がいずれ落ち着くと想定しており、コモドアLPGの燃料を満タンにするために必要な値段は平均55豪ドル程度で済むと想定している。
コモドアのLPGモデルはガソリン車よりも2,500豪ドル高いが、個人消費者が購入する場合、オーストラリア政府は2,000豪ドルの補助金を交付する。つまり、この差である500豪ドルの元を取るためには、単純計算で6ヶ月(10,000km)走ればいいことになる。この上、ロングホイールベースモデルのホールデン・カプリスはLPGモデルが当初ガソリンモデルと同価格で販売されることになっており、このため、ホールデンから実質2,500豪ドルの値下げを受けながら、同時に政府から2,000豪ドルの補助金も受け取ることができることになる。
道路で運転する限りでは、見た目はもちろん走りでもガソリンエンジンを搭載するコモドアとコモドアLPGはほとんど区別がつかない。トランクリッドに装着されるLPGエンブレムやナンバープレートに標章される菱型のLPGマークを除けば見分けようがない。3.0L V6 SIDIガソリンエンジンモデルと比べると、出力で14PS劣るものの、トルクでは3.1kgf·m勝っている。一方、同排気量である3.6L V6 SIDIガソリンエンジンモデルと比べると、出力で41PS、トルクで3.1kgf·m劣る。ただそれでも、ホールデンいわく、一般道路や高速道路での加速性能に問題はないという。0-100km/h加速は同排気量のガソリンエンジンも出ると比べると約0.5秒遅い。
LPGのブタンとプロパンの配合の違いもパフォーマンスに影響を与えるようだ。カタログスペックの出力・トルクの値はブタン:プロパン比が50:50で算出されているが(これはファルコンEcoLPiも同様だ)、実際に都市部で供給されるLPGのブタン:プロパン比は20:80もしくは10:90であることが多く、地方部では100%プロパンの場合が多い。LPGにブタンが多く含まれることにより加速性能が向上する一方、100%プロパンのLPGを用いると燃費性能は高まる。ちなみに、コモドアLPGはブタン配合比最高50%まで対応している。
メルボルンの高速道路での長期試乗を通して、コモドアLPGの加速性能は十分だということが分かった。LPGモデルは3.6Lのガソリンモデルよりも3.1kgf·mトルクが少ないため、搭載される6速ATもより軽量なもので済んでおり、またこのATはスムーズでエンジンに合っている。試乗車はシフトダウンが遅いと感じることも時々あったが(おそらくドライバーの運転スタイルを学習していたのではないかと思うが)、基本的には十分なパフォーマンスを発揮してくれた。このほか、エンジンの起動が早いことや車内の静粛性にも驚かされた。

2009年にコモドアLPGのプロジェクトが始動した大きな理由のひとつが、従来のコモドアに設定されたLPG・ガソリン併用のデュアルフューエルモデルのトランク容量が小さかったという点だ。多くの顧客がコモドアのデュアルフューエル車に興味を示したにもかかわらず、トランクに燃料タンクが配置されていた点は大きな問題となった。そこで、トランクスペースを犠牲にしないLPG専用モデルの開発が決定された。そしてLPGタンクがトランクからリアアクスルの後ろへと移動することで、十分なトランクスペースが確保された。依然としてフルサイズのスペアタイヤが搭載できない点などは課題として残されてはいるものの、パンク応急修理キットは標準で搭載されている。また、フルサイズスペアタイヤもしくは非常用小型スペアタイヤもオプションで搭載することができる。
他のコモドア同様、LPGモデルもANCAPの安全評価で五ツ星を得ている。アルミ製の燃料タンクは後ろからの強い衝突にも耐えることができ、ホールデンによると安全性はガソリンモデルと変わらないという。
コモドアLPGは、普通のコモドアに500豪ドルプラスするだけでランニングコストがかなり安くなり、車のライフタイムのうちにかなりの金額を節約できることだろう。ファルコンEcoLPi(コモドアLPG同様標準モデルよりも2,500豪ドル高い)と比べると速さや技術の先進性では劣るが、大型車として十分な商品力をもっており、ホールデンのファンに対する訴求力は高い。
おそらくコモドアLPGは商用車として企業から関心を集めるだろうが、個人消費者のLPG車に対するイメージも大きく変わることだろう。大型車が必ずしも燃費が悪いわけではないというアプローチは多くの人に受けることだろう。
http://www.caradvice.com.au/159889/holden-lpg-commodore-review/

ホールデン・コモドアにLPG車が追加された。LPGモデルはコモドアのセダン、スポーツワゴン、ユート(ピックアップトラック)、それにコモドアのロングホイールベースモデルであるホールデン・カプリスのすべてに設定され、ホールデンはこのモデルにより代替燃料に対するイメージを変えようとしているようだ。
オーストラリアには3,300を超えるLPGステーションがあるので、燃料調達に関する心配はほとんどないだろう。現在オーストラリアでLPGを燃料とする車は5%程度だが、ホールデンはこれを10%から最大で20%まで伸ばせるポテンシャルがあると考えている。
最高出力245PS、最大トルク32.6kgf·mを発揮するLPG 3.6LのEURO6適合V6エンジンは、競合車であるフォード・ファルコンEcoLPiと比べると出力で26PS、トルクで9.1kgf·m低い。パワーで劣っているのはひとつ問題になるし、ファルコンにはLPGの噴射方式として先進的な液体噴射方式 (LPI) が取られているのに対し、コモドアには従来的な気体噴射方式 (VPI) が取られているのも問題となる。
ホールデンによると、元々はLPIでコモドアLPGの開発を進めようとしていたのだが、このシステムではCO2排出量や燃費性能の目標を達成できないと判断されたという。ホールデンの後輪駆動車開発マネージャーであるブライアン・マクマリー氏は、この車の発表時に豪州メディアに対し、この目標を達成できるのはVPIだけだったと話している。また、彼はVPIではパワーやトルクの面ではLPIに敵わないが、他の面では利点があるとも付け加えた。
ホールデンはVPIの方がオーストラリアの環境に合っていると考えている(もっとも、ホールデンのハイパフォーマンスディビジョンであるHSVはLPIのモデルを製造しているが)。VPIはより構造が単純であり、暑い環境下でも安定して使用することができる。ホールデンはコモドアLPGのために130万kmにわたるテストを行ってVPIシステムの調整を行い、独自の噴射装置、燃料レール、フィルターを開発している。
また、ホールデンのマーケティングチームはコモドアLPGを幅広い層に向けてアピールしていくと宣言しており(そのため様々なボディタイプやグレードがラインアップされている)、ターゲットはパワーやトルクを重視する層ではなく、ランニングコストや排出性能、燃費に興味のある層にターゲットを置いている。
84.4Lのアルミ製燃料タンクを備えているため、LPGのコモドア「Omega」は満タン給油で710km走行することができる(「Omega」および「Berlina」グレードの燃費は8.5km/Lとなり、これ以外のグレードのセダンモデルやスポーツワゴン、ユートの燃費は8.1km/Lとなる)。この航続距離はトヨタ・オーリオンAT-X(707km)やマツダ3(日本名: アクセラ; 696km)、そしてフォード・ファルコンXT(687km)にも勝る。また燃費性能はファルコンEcoLPiにも勝っている。それに、年間平均走行距離20,000kmと考えると、コモドアの燃料代は年間およそ1,227豪ドルと想定され、これはよりパワフルなファルコンEcoLPi(1,279豪ドル)とはそれほど変わらないものの、トヨタ・カムリハイブリッド(1,644豪ドル)やトヨタ・カローラ(2,028豪ドル)と比べるとかなり安い。
ここ数ヶ月でヨーロッパでのLPG需要が高まっているため、オーストラリアのLPG価格も高騰している。それでもホールデンはLPGの価格がいずれ落ち着くと想定しており、コモドアLPGの燃料を満タンにするために必要な値段は平均55豪ドル程度で済むと想定している。
コモドアのLPGモデルはガソリン車よりも2,500豪ドル高いが、個人消費者が購入する場合、オーストラリア政府は2,000豪ドルの補助金を交付する。つまり、この差である500豪ドルの元を取るためには、単純計算で6ヶ月(10,000km)走ればいいことになる。この上、ロングホイールベースモデルのホールデン・カプリスはLPGモデルが当初ガソリンモデルと同価格で販売されることになっており、このため、ホールデンから実質2,500豪ドルの値下げを受けながら、同時に政府から2,000豪ドルの補助金も受け取ることができることになる。
道路で運転する限りでは、見た目はもちろん走りでもガソリンエンジンを搭載するコモドアとコモドアLPGはほとんど区別がつかない。トランクリッドに装着されるLPGエンブレムやナンバープレートに標章される菱型のLPGマークを除けば見分けようがない。3.0L V6 SIDIガソリンエンジンモデルと比べると、出力で14PS劣るものの、トルクでは3.1kgf·m勝っている。一方、同排気量である3.6L V6 SIDIガソリンエンジンモデルと比べると、出力で41PS、トルクで3.1kgf·m劣る。ただそれでも、ホールデンいわく、一般道路や高速道路での加速性能に問題はないという。0-100km/h加速は同排気量のガソリンエンジンも出ると比べると約0.5秒遅い。
LPGのブタンとプロパンの配合の違いもパフォーマンスに影響を与えるようだ。カタログスペックの出力・トルクの値はブタン:プロパン比が50:50で算出されているが(これはファルコンEcoLPiも同様だ)、実際に都市部で供給されるLPGのブタン:プロパン比は20:80もしくは10:90であることが多く、地方部では100%プロパンの場合が多い。LPGにブタンが多く含まれることにより加速性能が向上する一方、100%プロパンのLPGを用いると燃費性能は高まる。ちなみに、コモドアLPGはブタン配合比最高50%まで対応している。
メルボルンの高速道路での長期試乗を通して、コモドアLPGの加速性能は十分だということが分かった。LPGモデルは3.6Lのガソリンモデルよりも3.1kgf·mトルクが少ないため、搭載される6速ATもより軽量なもので済んでおり、またこのATはスムーズでエンジンに合っている。試乗車はシフトダウンが遅いと感じることも時々あったが(おそらくドライバーの運転スタイルを学習していたのではないかと思うが)、基本的には十分なパフォーマンスを発揮してくれた。このほか、エンジンの起動が早いことや車内の静粛性にも驚かされた。

2009年にコモドアLPGのプロジェクトが始動した大きな理由のひとつが、従来のコモドアに設定されたLPG・ガソリン併用のデュアルフューエルモデルのトランク容量が小さかったという点だ。多くの顧客がコモドアのデュアルフューエル車に興味を示したにもかかわらず、トランクに燃料タンクが配置されていた点は大きな問題となった。そこで、トランクスペースを犠牲にしないLPG専用モデルの開発が決定された。そしてLPGタンクがトランクからリアアクスルの後ろへと移動することで、十分なトランクスペースが確保された。依然としてフルサイズのスペアタイヤが搭載できない点などは課題として残されてはいるものの、パンク応急修理キットは標準で搭載されている。また、フルサイズスペアタイヤもしくは非常用小型スペアタイヤもオプションで搭載することができる。
他のコモドア同様、LPGモデルもANCAPの安全評価で五ツ星を得ている。アルミ製の燃料タンクは後ろからの強い衝突にも耐えることができ、ホールデンによると安全性はガソリンモデルと変わらないという。
コモドアLPGは、普通のコモドアに500豪ドルプラスするだけでランニングコストがかなり安くなり、車のライフタイムのうちにかなりの金額を節約できることだろう。ファルコンEcoLPi(コモドアLPG同様標準モデルよりも2,500豪ドル高い)と比べると速さや技術の先進性では劣るが、大型車として十分な商品力をもっており、ホールデンのファンに対する訴求力は高い。
おそらくコモドアLPGは商用車として企業から関心を集めるだろうが、個人消費者のLPG車に対するイメージも大きく変わることだろう。大型車が必ずしも燃費が悪いわけではないというアプローチは多くの人に受けることだろう。
http://www.caradvice.com.au/159889/holden-lpg-commodore-review/