以前、ガソリンエンジンを搭載するフォード・フォーカスSTの試乗レポートを掲載しましたが、2014年に行われたフォーカスSTのマイナーチェンジの際にはディーゼルバージョンが追加されました。

今回は、英国「Auto Express」によるフォード・フォーカスSTディーゼルの試乗レポートを日本語で紹介します。


FocusST


2016年の生産開始が予定されているフォーカスRSは350PS超えの4WDになるという噂だが、一方のフォーカスSTはより分別のあるモデルである必要がある。そしてフォードは、250PSを発揮する2.0LのEcoBoostモデルに加えて、フォルクスワーゲン・ゴルフGTDに対抗するディーゼルモデルを初めて設定した。

フォーカスSTは2002年に初代モデルが発売されてから、その3分の1近くが英国で販売されており、このディーゼル版も英国が意識されている。また、この車は世界40ヶ国で販売されているということも忘れられてはいけない。ただ、果たしてディーゼル車を本当にホットハッチと呼んでいいのだろうか。

フォーカスSTディーゼルに搭載されるエンジンは、既にフォーカスにも搭載される、150PSを発揮する2.0L TDCiエンジンがベースとなっている。しかし、ECUチューンが施され、吸気システムが変更され、スポーツエグゾーストシステムを採用したことで、新エンジンは最高出力185PS、最大トルク40.8kgf·mを発揮する。最高出力は3,500rpmで発揮されるが、他のディーゼルエンジン同様これはあまり重要ではなく、むしろ2,000-2,750rpmで最大トルクが発揮されることのほうが重要だ。このため、0-100km/h加速は8.1秒と微妙な数字だが、50-100km/h加速は6.9秒と速い。

アイドリングストップが備わったガソリンモデルのフォーカスSTは、従来モデルよりも燃費性能や排出性能が6%向上し、燃費は17.6km/L、CO2排出量は159g/kmとなっている。ただこれはディーゼルモデルには劣る数字だ。フォーカスSTディーゼルは28.6km/Lの燃費と110g/kmのCO2排出量を実現しており、おかげで税金も安くなり、ランニングコストはガソリンモデルよりも安い。

アクセルを踏み込むと、予想通りのパンチのある加速が得られる。ただ、この車の凄いところは直線でのパフォーマンスではなく、リニアでスムーズなパワートレインの特性であり、おかげで高速域でも扱いやすく、思い通りに運転することができる。この車にはサウンドシミュレーターというものが付いており、これによってスピーカーを介し、ガソリンモデルにいやに似たエンジン音が流される。これはうまく作用し、実際に感じるエンジン音は、150PSの2.0Lディーゼルモデルよりもスポーティで唸るような音になっている。

このモデルには6速MTしか設定されないが、実際それだけでも十分で、ギアチェンジはスマートで正確だ。グレード設定は下からST-1, ST-2, ST-3の3種類が設定され、下の2つのグレードには18インチアルミホイールが標準装着され、今回試乗したトップグレードのST-3には19インチアルミホイールが装着されていた。それでも、乗り心地はそれほどひどくなかった。ちょっとした路面の凸凹を乗り上げるとRECAROシートの上で上下に揺すられる感覚があったが、スピードバンプのようなより大きな衝撃はうまくいなしていた。

より正確に比較するため、今回はガソリンモデルのフォーカスSTの試乗も一緒に行ったのだが、パフォーマンス面での違いはかなり大きかった。アクセルを踏み込むと、ガソリンモデルは飛び出していくような印象な一方でディーゼルモデルはどんどんと盛り上がっていくような印象で、エンジン音も全く違う。ただ、どちらも一長一短ある。バルセロナのウェット路面で試乗した際には、ガソリンモデルは前輪がよく滑って唐突にアンダーステアを呈したりしていたが、ディーゼルモデルはより尖りが少ない印象だった。一方でディーゼルモデルは、エンジンの重さのためにノーズが重くなっているため、高速コーナーでは安定感が劣ってしまう。

ただ、グリップさえ確保できればディーゼルモデルはコーナーでもなんの問題も呈さない。従来モデルと比べると、新型ではフロントのスプリングが完全新設計となり、ダンパーは硬められ、可変ギアレシオステアリングのギアレシオはよりクイックな特性となっている。このステアリングはフォーカスSTのキャラクターに合うだけの十分な重さがあり、中立を外れるとすぐさま反応する。この反応は早過ぎるくらいだが、それでもすぐに慣れることができる。それに操作性もよく、従来モデルよりわずかに機敏な印象に感じられる。

rear

ディーゼルエンジンのパフォーマンスはガソリンエンジンよりもわずかに大人しくも感じられるが、外から見ている分には違いはわからない。どちらにも専用のプレスラインが施されたボンネットや標準モデルよりも精悍な印象のヘッドランプ、大型フロントグリル、専用バンパーなどが備わる。これ以外にも、サイドスカートやルーフスポイラー、六角形のツインエグゾーストやリアディフューザーなども外装部品として装備される。このデザインはオーソドックスな印象のゴルフGTDと比べるとワイルドにも見えるが、この車の源流はエスコート・コスワースにあるとも言えるので、相応しいデザインとも言えるのではないだろうか。

インテリアも進化しており、トップグレードにはSync 2の8インチタッチスクリーンインフォテインメントシステムが装着され、まともに機能するボイスコマンドシステムも付いている。フラットボトムのステアリングや3眼メーター、それに色彩設計はセンスがあるし、50km/hまで作動可能なオートブレーキやアダプティブヘッドライトなどの先進装備も付いている。


フォーカスSTディーゼルはフォーカスSTライトだと考えるといい。加速はガソリンモデルほど激しくないが、室内に聞こえてくる音は驚くほどガソリンモデルに近く、ステアリングはほとんど同じくらい正確で、見た目も同一で、価格もほとんど同じだ。スリルよりも実用性や燃費を求めるなら、この車はガソリンモデルよりも圧倒的に優れていると言える。ただ、それならさらに1,100ポンド高いフォーカスSTディーゼルのステーションワゴンバージョンを薦めたい。こちらは速くて楽しい上に家族連れにも適している。


Ford Focus ST diesel 2015 review