現在、日本国内ではいすゞは乗用車販売から撤退していますが、海外に目を向ければクロスオーバーSUVの「MU-X」やピックアップトラックの「D-MAX」を現在でも販売しています。

今回は、オーストラリア「CarsGuide」によるいすゞ・MU-Xの試乗レポートを日本語で紹介します。


MU-X


乗用車をラインアップに入れたので、いすゞトラックオーストラリア社は社名を変える必要があるだろう。MU-Xは7シーターのSUVで、いすゞ・D-MAXピックアップトラックをベースとしている。MU-XとD-MAXはいずれもピックアップトラックのホールデン・コロラド(別名: シボレー・コロラド)やSUVのコロラド7(別名: シボレー・トレイルブレイザー)とプラットフォームを共有している。とはいえ、MU-Xとコロラド7には明白な違いがあり、最近良く見かけるただのバッジエンジニアリング車とは一線を画する。

MU-Xの価格はエントリーグレード「LS-M」のFRモデルが40,500豪ドルで、同グレードの4WD版は47,800豪ドル、そして最上級グレードの「LS-T 4x4」は53,500豪ドルとなる。問題は、この車を検討する人は間違いなくコロラド7と比較するという点だ。

4x2の後輪駆動モデル以外ではホールデンのほうがお買い得だ。それも値段が安いだけでなく、D-MAXが5速ATなのに対してコロラド7は6速ATだし、ディーゼルエンジンはコロラド7のほうがパワフルだ。とはいえ、それでもMU-Xは見た目のいいオールラウンダーだし、週末に遊ぶには十分な、ローギアの付いた本物のオフローダーでもある。

3.0Lのいすゞ製4JJ1-TC型ハイパワーディーゼルエンジンは最高出力177PS、最大トルク38.7kgf·mを発揮する。これはコモンレール式直噴エンジンで、可変ジオメトリーターボチャージャーを備える。MU-Xの5速ATはマニュアル変速も可能で、ブレーキやスロットル開度を学習することで適切な変速タイミングを学習するシステムも備わっている。

ヒルディセント/ヒルアセントモードも備えており、これにより走行状況に応じて3速にキープされる。MU-Xのパートタイム4WDシステムであるテレーンコマンドはセンターコンソールにあるダイヤルにより操作でき、2WDモードと4WDハイモード、4WDローモードを選択することができる。

パートタイム4WDなので乾燥した路面を4WD状態で走行することはできないが、100km/hまでは2WDモードと4WDハイモードの変更はできる。ただ、4WDローモードに入れるためには一旦停止する必要がある。

MU-Xはファミリーオールラウンダーと謳われており、ミドルグレードの「LS-U」には装備も充実している。エントリーグレードのLS-Mは16インチホイールを履くが、今回試乗したLS-Uは17インチホイールを履き、それにフォグランプやメッキグリル、メッキドアミラー、アルミ製サイドステップなどが追加装備される。6スピーカーのプレミアムオーディオシステムやiPod接続機構、Bluetooth接続機構は全グレードに備わっている。

6エアバッグをはじめとして安全装備は十分に備わっており、ANCAPでは最高評価の5つ星を獲得している。リアパーキングセンサーは標準装備だが、少なくとも今回試乗したモデルにはバックカメラは装備されていなかった。

interior

この車には欲しいと思わせるものがある。ディーゼルエンジンはスムーズだし、かなり静かだ。ただ、燃費は予想より少し悪かった。ダッシュボードは気に入ったし、特にエアコンの室温調節用の大型ダイヤルは使いやすい。ただ、トラックっぽさもあり、ワンタッチウインカーは装備されていないし、ライトの警告音は自動的には鳴り止んでくれない。

ウェットコンディションでは少しスリップ傾向にあったが、それでもスタビリティコントロールにより十分に制御はされていた。MU-Xは真面目にオフロード走行まで考えて作られており、スチール製のアンダーガードはオイルパンやトランスファーを保護するように設計されている。最低地上高は230mmとかなり高く、アプローチアングルやデパーチャーアングルも十分だ。

燃費は11.9km/Lとアナウンスされており、つまり燃料タンク容量は65Lなので770kmは無給油で走れるということになる。ただ、今回の700kmにわたる試乗ではトリップコンピューターが示した数値は8.2km/Lだった。

7シーターのSUVを探しているなら、MU-Xも十分検討する価値がありそうだ。MU-Xには十分なパフォーマンスがあるし、本物のオフロード性能も持っており、家族にも優しい5つ星の安全性も備わる。そして何より、リーズナブルな値段で手に入れることができる。


2014 Isuzu MU-X review | LS-U