ルノー・フルエンスはメガーヌセダンの後継車で、開発は韓国のルノーサムスン自動車により行われています。ベースとなっているのはルノーサムスン・SM3で、ルノー日産のCプラットフォームをもとに開発されています。

今回は、マレーシア「paultan.org」による、ルノー・フルエンスの試乗レポートを日本語で紹介します。


Fluence


マレーシアで新たに発売される最新のCセグメントセダン、ルノー・フルエンスを紹介する。フルエンスは、マレーシアで覆面が施されたテスト車が目撃されはじめてから数カ月後の2014年5月に、マレーシアでのデビューを果たした。このテスト車はマレーシアでルノー車の販売を手がけるTCユーロカーズが走らせていたマレーシア製のモデルで、実際に発売されたマレーシア仕様のフルエンスは115,000リンギットからという魅力的な価格設定となっている。

フルエンスはホンダ・シビックやトヨタ・カローラアルティスといった日本車や、プジョー・408やC348系フォード・フォーカスセダンといったヨーロッパ系のCセグメントモデルと競合する。

フルエンスは基本的にはルノー・メガーヌのプラットフォームをベースとしたセダンだが、従来のメガーヌセダンがハッチバックにトランクを付けただけのぎこちないデザインだったのに対し、フルエンスは独自のデザインとなっている。このため、メガーヌセダンではなく、フルエンスという独自の名前が与えられている。メガーヌらしさを感じさせるのは、共通のダッシュボードだけだ。

パワートレインはメガーヌに搭載されるものとは全く異なり、2.0Lの4気筒エンジンにCVTが組み合わせられている。このエンジンはルノー内ではM4R型と呼称されているが、マレーシア人にとってはMR20DEという日産名の方が親しみ深いだろう。これは、先代シルフィやティアナの2.0Lモデル、それに2代目エクストレイルに搭載されていた。

フルエンスを旧型シルフィの化粧直し版だと考える人もいるかもしれないが、そんなことはない。旧型シルフィとフルエンスは全く別のプラットフォームをベースにしている。旧型シルフィはBセグメント車用プラットフォームをストレッチしたものを用いており、一方でフルエンスはメガーヌと共通のCセグメント車用プラットフォームを用いている。Bセグメント用プラットフォームのストレッチ版にはもちろん限界があり、実際、旧型シルフィは車幅が狭くてその割に背が高く、不格好に見えた。一方、Cセグメント車用プラットフォームをベースに開発されたフルエンスにはそんな問題はない。

2,702mmというフルエンスのホイールベースはCセグメント車の中でも最長だが、差はわずか2mmでしかない。フルエンスが初めて発表された当時はこの数字も驚異的だったが、今となっては多くのライバルが軒並みホイールベースを2,700mmとしている。

2.0Lエンジンは横置きで、ジヤトコ製のCVTを介して前輪に動力が伝えられる。最高出力は145PS/6,000rpm、最大トルクは19.9kgf·m/3,700rpmを発揮する。0-100km/h加速は10.1秒で、最高速度は195km/h、燃費は13.0km/L、平均CO2排出量は178g/kmとなる。

115,000リンギットという価格は非国産2.0L Cセグメント車としては安い部類に入る。最も安いのは106,824リンギットという価格設定となるプジョー・408 2.0で、その次に安いのはフォード・フォーカス 2.0 Titaniumの113,734リンギットだ。とはいえこれは車両本体価格だけの比較で、TCユーロカーズはそれ以外にもフルエンスに5年間の走行距離無制限のメーカー保証を設定している。また、これには無料の10万km点検もついており、このサービスパッケージは5,231リンギットとなる。

これはなかなか面白いアフターサービスで、レクサス的とも言える。とはいえ、長らくカングーやメガーヌといったコンパクトカーしかラインアップせず、このクラスではあまりメジャーではないルノーというブランドのCセグメントセダンを購入する消費者の不安を解消するためにはこういったシステムも必要だろう。マレーシアで一番最近売られていたルノーのセダンといえば、はて、ルノー・19だろうか。

つまり、この車は購入してから10万km走るまでサポートされるわけだが、車に乗り込んだ後のことを書く前に随分と紙面を使ってしまったようだ。

今回の試乗のためにフルエンスを受け取った際、鍵の代わりに黒い「カード」を受け取ったのには驚いた。これは名刺大かそれより少しい大きいくらいで、言うまでもないが名刺よりもよっぽど厚い。これはシフトレバーの前にあるスロットに挿入することができるが、キーレスエントリーシステムも付いているので実際はこのカードをそれほど気にする必要はない。車から離れれば自動的に鍵もかかる。

フルエンスにはマツダ・3(日本名: アクセラ)のような外見的な魅力はなく、ルックスを理由にこの車を購入するということはないだろうが、それでも悪いデザインではない。現在、一部の市場では2度目のフェイスリフトを受けたフルエンス(フェイスリフトを受けた新型メガーヌに似たデザイン)が販売されているが、マレーシアでのノックダウン生産開始のタイミングの関係で、マレーシア仕様車は1度目のフェイスリフト後のデザインとなっている。現在、最新のフェイスリフトを受けたモデルは左ハンドル車しか生産されていないらしく、ここマレーシアの他にも、オーストラリアなどの右ハンドル地域ではフェイスリフト前のモデルが販売されているという。

interior

メータークラスター部分の構成は、左側にアナログのタコメーターが配され、中央部には燃料計、水温計、それにドア警告灯と一体となったデジタルスピードメーターが配されており、右側にはマルチインフォメーションディスプレイが配される。

ルノーのR-Linkナビゲーションシステムはダッシュボード中央の最上部に配されており、一見するとアウディのナビのように格納できそうだが、実際は固定されている。フルエンスはタッチスクリーンインフォテイメントシステムを標準装備する数少ないモデル(ほかにはマツダ・3がある)の1つであり、このためプレミアム感がある。タッチパネル操作が嫌ならダッシュボードにあるダイヤルでのナビ操作も可能だが、残念ながら操作系は垂直な配置となっており、またダイヤルも非常に小さいため、特に運転中には操作しづらい。センタークラスターの一番下にはUSBポートがあり、携帯電話やUSB記憶媒体を接続することができる。SDカードスロットもあるが、これはTomTom製のナビゲーションシステムの地図データ用だ。このナビは解像度も高く見やすい。AUXポートもあり、旧世代の音楽再生機器とも接続できる。CDプレーヤーやBluetooth接続機能も有しており、音は6スピーカーにより出力される。

後席エアコン吹出口付きのデュアルゾーンオートエアコンやクルーズコントロール、オートライト、雨滴感知式ワイパーなども装備される。なぜか前後のパーキングセンサーは装備されないが、R-Linkナビにはバックカメラも含まれている。ヘッドランプはマニュアルレベライザー付きのハロゲンランプで、キセノンランプほど明るくはなく、特に夜間はハロゲンヘッドランプではプレミアム感に欠ける。デイライトもないし、テールランプは普通の電球だ。

シート同様、ステアリングも本革で、2時の位置と10時の位置が太くなっており、スポーティな印象としている。ステアリングスイッチにはクルーズコントロールの操作系しかなく、オーディオの操作は昔のプジョーやシトロエンのようにステアリングの後ろに隠れているスイッチで行う。これはフランス車らしさだろう。おかしな部分は他にもあり、クルーズコントロールの起動スイッチはサイドブレーキレバーのそばにあるのに、それ以外のクルーズコントロールの操作系はステアリングスイッチにある。とはいえ、それ以外は直感な操作ができる。仕上がり感は非常によく、材質もいい。

収納に関しては、グローブボックスは比較的小さく、ドアポケットは浅く、センターコンソールには2つのカップホルダーがあり、リアセンターアームレストにも2つカップホルダーがある。ドアポケットの容量やグローブボックスに関しては特に改善を要する。

問題点は他にもある。シートの形状があまり良くなく、平板な印象で硬いし、座面は少し短すぎるように感じる。この車で街の中心部まで妻を迎えに行った際に渋滞にはまって1時間乗りっぱなしだったのだが、それでも少し疲れてしまった。

安全装備としては、6エアバッグやESCなどが含まれる。リアシートは両サイドともISOFIXに対応しており、チャイルドシートを装着することができる。このため、日産・シルフィなどよりは子供を持つ消費者にはありがたい。

欧州車の典型的なサスペンションチューニングやステアリングの重さとなっているため、コーナーでは非常にバランスが良いのだが、メガーヌのプラットフォームをベースにしているにもかかわらず、走りは似ても似つかない。確かに高速でも安定しているのだが、運転を楽しむというよりは楽に移動するための車といえる。とはいえ、この車の特性はこのクラスの車にはいいことだ。ただ車に乗って、車に不満を感じることなく、何事もなく目的地につける。うまく調整されたCVTや、中間トルクの十分なエンジンのおかげで、運転中にはエンジンやCVTの存在が気にもならない。その上、この特性により低回転を保った経済的な運転が自ずとできるようになる。世の中には低中域トルクが小さかったり、シフトチェンジがやたら頻繁に行われるためにエンジン回転数を上げて走る車があるが、この車はそんな車とは正反対だ。

こういう車に乗っていると、車の存在それ自体を忘れがちになるし、これは欠点とも言える。フルエンスは気にかける必要のない信頼できるただの道具でしかない。あるいは、トヨタ車的であるとも言える。とはいえ、この車にはちゃんと安全装備やその他の必要な装備は揃っている。

つまり、フルエンスはCセグメントセダンの中で楽しい部類に入るとは言えないが、もし車を単なる移動手段としか考えず、アフターサービスも気になるのであれば、この車を検討する価値はあるだろう。


DRIVEN: Renault Fluence 2.0 X-Tronic CKD tested