インドネシアでは低価格・低排出ガスの車がLCGC(ローコストグリーンカー)として税制優遇を受けるという制度があります。この税制に適合する車は各社が開発しており、日本でも販売されているモデルとしては三菱・ミラージュが、それ以外にはホンダ・ブリオやダットサン・GO、そしてダイハツ・アイラなどがあります。

このダイハツ・アイラのトヨタへのOEM供給モデルがトヨタ・アギアであり、このモデルはフィリピン市場ではトヨタ・ウィーゴとして販売されています。

今回は、フィリピン「Autoindustriya」による、トヨタ・ウィーゴの試乗レポートを日本語で紹介します。


Wigo


ウィーゴは見逃せない新型車だ。広告もたくさん打たれているし、価格は実に衝撃的なので、きっとコンパクトカーセグメントを掻き回すことだろう。

サイズや価格を考えれば、ウィーゴは三菱・ミラージュやヒュンダイ・イオン、シボレー・スパークと競合することになりそうだ。

ウィーゴはインドネシアのLCGC(ローコストグリーンカー)政策に対応するダイハツ・アイラの姉妹車であり、成長しているスモールカー市場に対応するために急遽開発されたモデルかとおもいきや、トヨタ・モーター・フィリピン社長の菅田道信氏によると、この車は何年もかけて開発されたモデルだという。

ヨーロッパで販売されるAygo(発音は'I go')に合わせたかのように、この車にはWigo('We go'と発音する)と命名されている。ウィーゴはこのクラスに新規参入してくるモデルだが、この車には備えるべきものは備わっているようで、ライバルの中でトップレベルに安いとまでは言えないが、十分な装備を持ちながら競争力のある価格設定となっている。

笑った顔にも似たフロントフェイスはあまり好きになれない。ヘッドランプは高い位置にあり、バンパーが笑顔を形作っているようだ。このクラスとしては珍しく、フォグランプが標準装備されており、バンパーの両端に配されている。樹脂製の黒いバンパーを装着するモデルは設定されない。ボディ同色のバンパーが全グレードで標準装備され、メッキ加飾があちこちに施されている。ホイールは14インチのアルミで、車両後部にはフルサイズのスペアタイヤが装備されている。

このクラスの車のインテリアといえば大概残念なのだが、この車はそうではない。身長180cmの人にも十分なヘッドルームがあるし、ボトルホルダーを始めとして収納スペースも充実している。リアシートには十分なレッグルームがあり、ちゃんと3人乗ることができる。また、リアシートは分割はできないがひとまとめで倒すことはでき、荷室スペースとすることもできる。リアシートを倒す際に両サイドのシートベルトが邪魔にならないようにシートベルトを引っ掛けておくクリップも装備されている。荷室スペースは広く、フロア下にフルサイズのスペアタイヤが入っているが、それでもラゲッジスペースに旅行鞄を2つ収めることができる。ただ、もしスペアタイヤを使おうという時になっても、ジャッキや工具類が搭載されてはいないので気をつける必要がある。

interior

メーター部分にはタコメーターやデジタルマルチインフォメーションディスプレイもついている。燃費計はデジタル表示で、オレンジのバックライトが照らしている。センタークラスターにはエンターテイメント用の液晶ディスプレイも装備されている。これはミラージュに装備されるものに似ており、タッチパネル方式でSDカードスロットも備わっている。こちらはオプションになると思うが、ダッシュボード内にはiPodやMP3プレイヤーと接続できるUSBポートもある。

スピーカーはフロントに2つしかなく、音量を上げると音の悪さが目立つ。ただ、アップグレードは可能で、リアドア部分に追加のスピーカーを装備することもできる。これはナビゲーションシステムとのセットオプションとなる。

エアコンの操作系はシンプルなダイヤル式だ。今回試乗したグレードでは、電動ドアロックやパワーウインドウは、リアシートにも標準装備される。

パワーユニットは、1.0Lの3気筒エンジンだ。このクラスとしては平均的な、最高出力65PS、最大トルク8.7kgf·mを発揮し、4速ATを介して前輪にパワーが伝達される。シフトレバーは少し軽く、低いギアに入ってしまいがちだということに留意するべきだ。特に夜間は、オレンジのインジケーターで示されたどのギアに入っているのかという表示がグリーンの室内照明により読みづらくなってしまい、今何速に入っているのかということが把握しづらい。

そうはいっても、街中では運転しやすい。ATとはいえ低回転域でもしっかりとパワーがあり、比較的交通量の多い道でもちゃんと流れについていくことができる。特に60km/hまでの加速は比較的速いように感じた。60km/hを超えると加速感は鈍ってしまうが、それでも高速道路で120km/hを出すことはできる。この車には、街中でも郊外でも、2人とその荷物を積んで走るのに十分な能力が備わっている。

1週間、混んだ道の中をウィーゴで通勤してみたのだが、そこでは9.5km/Lという素晴らしい燃費を記録した。高速道路で平均100km/hで巡航した際にも13km/Lというなかなかの数字を記録した。

ウィーゴの唯一と言ってもいい欠点は、標準でスピーカーが2つしか装備されないという点だ。とはいえ、ウィーゴの価格設定は非常に競争力があり、売れているライバルのいくつかよりも安い価格設定となっている。デイリーコミューターとしての必要条件はちゃんと備えており、燃費もいいし、取り回しもしやすく、駐車も楽だ。この車は初めて車を運転するオーナーが安心して乗れる車であり、次の車への素晴らしい架け橋となることだろう。


2014 Toyota Wigo 1.0G A/T