米国「Car and Driver」によるフォード F-150の試乗レポートを日本語で紹介します。

今、アルミ缶が酒造業界でもてはやされている。かつてチープで味気ないビールの象徴だったアルミ缶は、ガラス瓶よりも密閉性が高く、内容物を紫外線による劣化から守るという点で長けており、輸送にかかる費用やエネルギーを削減する。40年以上の間、ミラーライトビールにより押され続けてきた烙印を取り除けようではないか。アルミ缶こそ、高級ビールに相応しい容器だ。
アメリカで最も売れている車であるフォード・F-150はアルミボディで大幅な軽量化を果たしている。おそらく普通なら、これは革新で、進歩で、良いことだと考えることだろう。ただ、シボレーやラムの熱狂的信奉者にとっては、ビールの缶でできたような車になど乗れるかという偏見が残ることだろう。彼らは缶詰の缶でできた車のほうが好きなのだ。
F-150は、強度の高いアルミニウム合金を用いることで、キャビンおよび荷室部分合計で約230kg軽量化している。ボディでスチールが用いられている部分といえば、車内への騒音の侵入を防ぐ防音壁くらいだ。フレーム部分には旧型モデルの3倍近い強度を持つスチールが用いられており、フレームも約30kg軽量化されている。さらに、シートやリーフスプリング、ロアコントロールアームも軽量化され、合計で320kg近い軽量化がなされている。
ただ、我々はメーカー主張する軽量化という言葉には懐疑的だ。現行型ランドローバー・レンジローバーがアルミニウム構造を採用した際、ランドローバーは400kg以上の軽量化を謳っていた。しかし、我々が実際に計測したところ、重量減は180kgにも満たなかった。なので、我々はまず、フォードによって指定された試乗ルートを無視し、公認された車重計のあるテキサス州コンフォート地区に向かった。試験対象であるフォード・F-150 Platinum クルーキャブ 4WD 3.5L EcoBoost V6は、鉛製のトラックよりも値段は重く、61,465ドルだ。この車の実際の重量は2,531kgで、一方、以前にミシガンで測定した2013年モデルの旧型フォード・F-150 Limited クルーキャブ 4WD 3.5L EcoBoost V6の車重は2,735kgだった。つまり、差は204kgだ。
数学者は204は320ではないことに気付くだろう。とはいえ、この数字も十分大きい。それに、正直なことを言えば、比較対象として挙げた旧型モデルは今回の試乗車よりも装備内容が少ないし、全長も短い。2013年モデルのテスト車両は標準仕様の1,676mmの荷室長をもつが、新型のテスト車はロング荷室のモデルでホイールベースも延長されている。また、新型モデルのPlatinumグレードにはパノラミックガラスルーフのような重量のある装備もついていた。そうはいっても、完全に同一な装備内容で比較したところで重量差が320kgになるとは思えないが、少なくとも270kgくらいの差はあると思う。
アルミニウムボディが論争の的になるなら、2.7L V6エンジンという小さな排気量のエンジンがこのフルサイズトラックに搭載されることは冒涜だとすら言われかねない。しかしこの新設計の2.7L EcoBoostエンジンは新技術が満載されていて、ベースグレードに設定される3.5L 自然吸気エンジンよりもパワフルだ。3.5L NAエンジンは最高出力286PS、最大トルク35.0kgf·mというスペックだが、2.7L V6 EcoBoostエンジンは、最高出力330PS、最大トルク51.8kgf·mを発揮する。2.7L EcoBoostエンジンは、3.5L EcoBoostエンジン同様ツインターボチャージャーを備えた直噴エンジンで、コンパクト黒鉛鋳鉄製のエンジンブロックやクランクメインキャップ、水冷式エグゾーストマニフォールド一体シリンダーヘッドの採用により、ハードウェア面での強化も行われている。F-150に搭載される中でも最も排気量の小さなこの6気筒エンジンは低回転域でも十分なパワーを発揮し、騒音や振動、出力特性などの面でも優れている。このエンジンを選択するためには、3.5L NAエンジンよりも795ドル余計に払う必要があるが、事実それだけの価値がある。
同様のことが、先代モデルからキャリーオーバーされた3.5L EcoBoostエンジンにも言える。このエンジンは先代のモデル後半から搭載されており、V8エンジンをパフォーマンスと価格の両面において超えていた。4,000kgのカーゴトレーラーを390PS/53.5kgf·mのV8 5.0Lモデルに連結して走ってみた際には、4.6kgf·mトルクが上回る58.1kgf·mの3.5L EcoBoostエンジンが恋しく思えた。また、V6ターボモデルには、回転数をモニタリングすることによってスピーカーから室内に人工のエンジン音が流されるため、室内にはV8エンジンのような唸りが聞こえてくる。サウンド・エンハンスメントと呼ばれるこのシステムは、2.7L EcoBoostおよび3.5L EcoBoostの上級グレードの装備されており、大人しいEcoBoostエンジンの音の印象を変えている。
我々は従来の3.7L V6に取って代わったベースエンジンである3.5L V6 NAエンジンを搭載するモデルにだけは試乗できなかった。基本的にこれは商用向けだが、軽量化のおかげもあってこのエンジンを搭載するモデルにまで4WDのクルーキャブが設定されている。
新型モデルでは乗り心地や剛性が向上されている。乗り心地は滑らかで、荒い道を走った時に生じる二次的な揺れを抑える(無くす、とまでは言えない)構造になっている。操縦性はラム・1500よりも良く、静粛性はシボレー・シルバラードと同等だ。ステアリングは軽い部類に入るが、正確で反応性も高い。ただ、ブレーキは過敏でフィードバックに欠けており、改善を要する。
フォードによると、アルミニウムによる軽量化によって燃費は5~20%向上しているという。ただ、ピックアップトラックを仕事に使っている人にとっての軽量化の最大の恩恵は、軽量化された分の重量だけ牽引・積載能力が増えるという点だ。新型F-150は米国内で販売されるライトデューティートラックの中でも最高の、最大牽引重量5,530kg、最大積載重量1,500kgを誇る。ただ、ベースエンジンのレギュラーキャブモデルでは、一部グレードで最大積載重量が約90kg低くなっている。

F-150の最上級グレードであるPlatinumのインテリアはリンカーンすら超えている。そしてどのグレードでも手が触れる部分の質感は高い。ただ、ダッシュボードのプラスティックは依然として安っぽさが残り、仕上がり感はシボレーやラムのレベルには至っていない。
室内外問わず様々な新装備が追加されており、未来感や高級感を増している。アナログのタコメーターとスピードメーターの間にはオプションの大型デジタルスクリーンを装備することができ、その他にもアラウンドビューモニターやドアミラー足元灯、リモート操作可能なパワーテールゲート、荷室側面に配置される荷室灯などがオプション設定されている。しかし、最高な装備はもっとシンプルなものかもしれない。リアシートを倒せばフラットなフロアが生まれ、室内に荷物を積み重ねることができるし、荷室部分には左右に2つずつ、計4つのフックが付けられており、ここにロープなどを括ることで荷物を固定することができる。
ただ、これだけの装備があっても、F-150は万全というわけではない。アダプティブダンパーは採用されていないし、6速ATは旧型から変わっていないし、カタログにはハイブリッドやディーゼルの文字が見当たらない。せっかくアルミ構造という革新的な構造にしたのだから、次世代の技術をもっと取り入れるべきだろう。GMと共同開発中の10速ATも、モデルサイクル途中のマイナーチェンジの際には是非F-150に採用して欲しい。
アルミは鉄よりも高いが、F-150の価格はグレードによっては値上がり幅はわずか500ドルとなる。ただ、それでも値上がりしたという事実は変わらない。今回、2.7L EcoBoostエンジンを搭載する後輪駆動モデルのXLT(布シートで比較的装備の少ない低級グレード)にも試乗したが、これでも価格は42,875ドルもする。もっとも、F-150以外のフルサイズトラックも高価であることにそれほど変わりはないが。
ただ、トラックにそれだけの値段を払うつもりがあるなら、F-150には価格相応の価値があるといえる。アルミのボディは日々変化している業界にそれでも大きな革新をもたらした。アルミとは最高のビールであるのと同様に、アルミとは良いトラックでもあるようだ。未だガラス瓶の束縛から逃れられない人も、アルミを非難するべきではないだろう。
2015 Ford F-150 First Drive

今、アルミ缶が酒造業界でもてはやされている。かつてチープで味気ないビールの象徴だったアルミ缶は、ガラス瓶よりも密閉性が高く、内容物を紫外線による劣化から守るという点で長けており、輸送にかかる費用やエネルギーを削減する。40年以上の間、ミラーライトビールにより押され続けてきた烙印を取り除けようではないか。アルミ缶こそ、高級ビールに相応しい容器だ。
アメリカで最も売れている車であるフォード・F-150はアルミボディで大幅な軽量化を果たしている。おそらく普通なら、これは革新で、進歩で、良いことだと考えることだろう。ただ、シボレーやラムの熱狂的信奉者にとっては、ビールの缶でできたような車になど乗れるかという偏見が残ることだろう。彼らは缶詰の缶でできた車のほうが好きなのだ。
F-150は、強度の高いアルミニウム合金を用いることで、キャビンおよび荷室部分合計で約230kg軽量化している。ボディでスチールが用いられている部分といえば、車内への騒音の侵入を防ぐ防音壁くらいだ。フレーム部分には旧型モデルの3倍近い強度を持つスチールが用いられており、フレームも約30kg軽量化されている。さらに、シートやリーフスプリング、ロアコントロールアームも軽量化され、合計で320kg近い軽量化がなされている。
ただ、我々はメーカー主張する軽量化という言葉には懐疑的だ。現行型ランドローバー・レンジローバーがアルミニウム構造を採用した際、ランドローバーは400kg以上の軽量化を謳っていた。しかし、我々が実際に計測したところ、重量減は180kgにも満たなかった。なので、我々はまず、フォードによって指定された試乗ルートを無視し、公認された車重計のあるテキサス州コンフォート地区に向かった。試験対象であるフォード・F-150 Platinum クルーキャブ 4WD 3.5L EcoBoost V6は、鉛製のトラックよりも値段は重く、61,465ドルだ。この車の実際の重量は2,531kgで、一方、以前にミシガンで測定した2013年モデルの旧型フォード・F-150 Limited クルーキャブ 4WD 3.5L EcoBoost V6の車重は2,735kgだった。つまり、差は204kgだ。
数学者は204は320ではないことに気付くだろう。とはいえ、この数字も十分大きい。それに、正直なことを言えば、比較対象として挙げた旧型モデルは今回の試乗車よりも装備内容が少ないし、全長も短い。2013年モデルのテスト車両は標準仕様の1,676mmの荷室長をもつが、新型のテスト車はロング荷室のモデルでホイールベースも延長されている。また、新型モデルのPlatinumグレードにはパノラミックガラスルーフのような重量のある装備もついていた。そうはいっても、完全に同一な装備内容で比較したところで重量差が320kgになるとは思えないが、少なくとも270kgくらいの差はあると思う。
アルミニウムボディが論争の的になるなら、2.7L V6エンジンという小さな排気量のエンジンがこのフルサイズトラックに搭載されることは冒涜だとすら言われかねない。しかしこの新設計の2.7L EcoBoostエンジンは新技術が満載されていて、ベースグレードに設定される3.5L 自然吸気エンジンよりもパワフルだ。3.5L NAエンジンは最高出力286PS、最大トルク35.0kgf·mというスペックだが、2.7L V6 EcoBoostエンジンは、最高出力330PS、最大トルク51.8kgf·mを発揮する。2.7L EcoBoostエンジンは、3.5L EcoBoostエンジン同様ツインターボチャージャーを備えた直噴エンジンで、コンパクト黒鉛鋳鉄製のエンジンブロックやクランクメインキャップ、水冷式エグゾーストマニフォールド一体シリンダーヘッドの採用により、ハードウェア面での強化も行われている。F-150に搭載される中でも最も排気量の小さなこの6気筒エンジンは低回転域でも十分なパワーを発揮し、騒音や振動、出力特性などの面でも優れている。このエンジンを選択するためには、3.5L NAエンジンよりも795ドル余計に払う必要があるが、事実それだけの価値がある。
同様のことが、先代モデルからキャリーオーバーされた3.5L EcoBoostエンジンにも言える。このエンジンは先代のモデル後半から搭載されており、V8エンジンをパフォーマンスと価格の両面において超えていた。4,000kgのカーゴトレーラーを390PS/53.5kgf·mのV8 5.0Lモデルに連結して走ってみた際には、4.6kgf·mトルクが上回る58.1kgf·mの3.5L EcoBoostエンジンが恋しく思えた。また、V6ターボモデルには、回転数をモニタリングすることによってスピーカーから室内に人工のエンジン音が流されるため、室内にはV8エンジンのような唸りが聞こえてくる。サウンド・エンハンスメントと呼ばれるこのシステムは、2.7L EcoBoostおよび3.5L EcoBoostの上級グレードの装備されており、大人しいEcoBoostエンジンの音の印象を変えている。
我々は従来の3.7L V6に取って代わったベースエンジンである3.5L V6 NAエンジンを搭載するモデルにだけは試乗できなかった。基本的にこれは商用向けだが、軽量化のおかげもあってこのエンジンを搭載するモデルにまで4WDのクルーキャブが設定されている。
新型モデルでは乗り心地や剛性が向上されている。乗り心地は滑らかで、荒い道を走った時に生じる二次的な揺れを抑える(無くす、とまでは言えない)構造になっている。操縦性はラム・1500よりも良く、静粛性はシボレー・シルバラードと同等だ。ステアリングは軽い部類に入るが、正確で反応性も高い。ただ、ブレーキは過敏でフィードバックに欠けており、改善を要する。
フォードによると、アルミニウムによる軽量化によって燃費は5~20%向上しているという。ただ、ピックアップトラックを仕事に使っている人にとっての軽量化の最大の恩恵は、軽量化された分の重量だけ牽引・積載能力が増えるという点だ。新型F-150は米国内で販売されるライトデューティートラックの中でも最高の、最大牽引重量5,530kg、最大積載重量1,500kgを誇る。ただ、ベースエンジンのレギュラーキャブモデルでは、一部グレードで最大積載重量が約90kg低くなっている。

F-150の最上級グレードであるPlatinumのインテリアはリンカーンすら超えている。そしてどのグレードでも手が触れる部分の質感は高い。ただ、ダッシュボードのプラスティックは依然として安っぽさが残り、仕上がり感はシボレーやラムのレベルには至っていない。
室内外問わず様々な新装備が追加されており、未来感や高級感を増している。アナログのタコメーターとスピードメーターの間にはオプションの大型デジタルスクリーンを装備することができ、その他にもアラウンドビューモニターやドアミラー足元灯、リモート操作可能なパワーテールゲート、荷室側面に配置される荷室灯などがオプション設定されている。しかし、最高な装備はもっとシンプルなものかもしれない。リアシートを倒せばフラットなフロアが生まれ、室内に荷物を積み重ねることができるし、荷室部分には左右に2つずつ、計4つのフックが付けられており、ここにロープなどを括ることで荷物を固定することができる。
ただ、これだけの装備があっても、F-150は万全というわけではない。アダプティブダンパーは採用されていないし、6速ATは旧型から変わっていないし、カタログにはハイブリッドやディーゼルの文字が見当たらない。せっかくアルミ構造という革新的な構造にしたのだから、次世代の技術をもっと取り入れるべきだろう。GMと共同開発中の10速ATも、モデルサイクル途中のマイナーチェンジの際には是非F-150に採用して欲しい。
アルミは鉄よりも高いが、F-150の価格はグレードによっては値上がり幅はわずか500ドルとなる。ただ、それでも値上がりしたという事実は変わらない。今回、2.7L EcoBoostエンジンを搭載する後輪駆動モデルのXLT(布シートで比較的装備の少ない低級グレード)にも試乗したが、これでも価格は42,875ドルもする。もっとも、F-150以外のフルサイズトラックも高価であることにそれほど変わりはないが。
ただ、トラックにそれだけの値段を払うつもりがあるなら、F-150には価格相応の価値があるといえる。アルミのボディは日々変化している業界にそれでも大きな革新をもたらした。アルミとは最高のビールであるのと同様に、アルミとは良いトラックでもあるようだ。未だガラス瓶の束縛から逃れられない人も、アルミを非難するべきではないだろう。
2015 Ford F-150 First Drive
