前回は、シンガポール仕様の1.6Lターボを積む日産・シルフィSSSを紹介しましたが、今回はそれ繋がりで、同じエンジンを搭載するオーストラリア仕様のパルサーSSSを紹介します。

パルサーといえば、以前に紹介もした欧州仕様パルサーを思い出す方もおられるかもしれませんが、豪州仕様のパルサーは欧州仕様のパルサーとは別設計で、少し設計が古く、基本コンポーネンツはシルフィと共有しており、中国では「ティーダ」の名称でも販売されています。

「SSS」といえば、日本人にとってはブルーバードの印象が強いかと思いますが、オーストラリアではSR20DEを搭載したパルサーがかつて「SSS」の名称で販売されており、新型モデルはそんなパルサーSSSの復活という形での登場となっています。

今回は、豪州「CarAdvice」による、日産・パルサーSSSの試乗レポートを日本語で紹介します。


Pulsar SSS


13年もの間、かつて愛されたパルサーSSSは、伸び行くオーストラリアのホットハッチ市場から姿を消していた。しかしついにその名前は復活し、旧世代の自然吸気2.0Lエンジンに代わってよりパワフルな1.6Lターボを搭載した。

価格は29,290豪ドルからとなり、従来のSSSと同様にパルサーのトップレンジに位置するモデルだ。ただ、旧型パルサーSSSは23,470ドルだった。日産によると、ここまで価格が高くなったのは、出力・トルクともに向上しており、同時に装備も充実させたからだという。

SSSの見た目にもう少しこだわれば、もっと売れるのではないかと思う。SSSには17インチアルミホイールや専用のエグゾーストパイプが装備されており、標準モデルよりも少しスポーティにはなっているが、標準モデルとの差別化はそれほどされていない。一方で室内に目を移せば、レザーシートやプッシュエンジンスターター、デュアルゾーンエアコン、5.8インチナビゲーションシステム、バックカメラなどがSSS専用装備として備わっている。それ以外には、キセノンヘッドランプ、フロントフォグランプ、本革ステアリング、Bluetooth接続ハンズフリーフォン・音楽ストリーミング機能なども備わっている。

そして何よりも大きな特徴が、最高出力190PS、最大トルク24.5kgf·mを発揮する直列4気筒 1.6L直噴ターボエンジンで、これは従来型の2.0Lエンジンを搭載するパルサーSSSよりも48PS/6.2kgf·m、1.8Lエンジンを搭載する標準モデルの現行パルサーよりも60PS/6.7kgf·mパワフルだ。

もしもう少し安いSSSが欲しいのなら、同じ1.6Lターボを搭載する装備簡略版モデルである「ST-S」も設定されており、こちらは24,990ドルだ。

乗り始めてすぐに、SSSと標準モデルの違いが明白に感じられた。排気音はわずかに違っていたし、ステアリングは重くなっており、エンジンは明らかにパワーを増している。スロットルレスポンスは十分にシャープで、わずか2,000rpmから発揮される最大トルクにより、加速性能は高い。それに回転を上げていくとそれに応じてどんどん加速していき、過給がもっとも行われるスイートスポットは4,500rpm周辺だ。ギアがどこにあってもこの車には問題はなく、たとえ6速でも安全な追い越しに十分な加速が得られる。ただ、残念なことに、エンジンサウンドに関して言えば、少なくとも室内ではハイパフォーマンスカーらしさは感じられない。

日産はSSSの加速性能を公表してはいないが、推測では0-100km/h加速は7秒程度だと感じる。これはかつてのSSSが100km/hに至るまで8.8秒かかったことを考えると大きな進化だ。

パルサーSSSは前輪駆動で、非常にスムーズな変速が可能な6速MTが標準設定されている。ただ、我々はオプション設定されるCVTを載せたモデルも試乗した。このCVTには標準グレードに設定されるCVTとは異なり、マニュアル変速モードが備わっている。ただ、それでもMTモデルと比べると車との一体感が欠けており、パワーの伝達が少し抑えられているような感じがする。

さらに、パルサーSSSには専用のサスペンションチューニングが施されており、標準モデルよりも乗り味は硬いが、それでも悪路の凸凹をしっかりといなし、快適性は損なわれておらず、これは賞賛に値する。そしてコーナーでも素晴らしく、ロールはほとんど見せず、シャシのバランスがいいのでたとえスピードを出してもコーナーで苦労するようなことはほとんどない。

この車は純血のホットハッチとは言えないが、これはわずか29,000ドルちょっとで買える、十分なパフォーマンスを備えながら、利便性や快適性も損なっていないオールラウンダーだ。


2013 Nissan Pulsar SSS Review