フォードの大型FFセダン、トーラスには、3.5L V6ツインターボエンジンを搭載するハイパフォーマンスモデルの「SHO」が設定されています。

今回は、米国「Car and Driver」によるフォード・トーラスSHOの試乗レポートを日本語で紹介します。


Taurus SHO


トーラスは2012年にマイナーチェンジを行い、2013年モデルとして発売する。この新型モデルはマイナーチェンジによりスタイリングを一変させるだけでなく、エンジンラインアップも増加し、NVH性能も向上し、そしてMyFord Touchカーナビゲーションシステムも改良されており、ラージセダンのクラスでの競争力を高めている。

最後に挙げた改善点が重要で、フォードいわく、MyFord Touchはこれまででも多くの利用者に受け入れられてきたというが、実際のところは、一部の利用者にとっては混乱を来したり使いづらかったりすることもあり、また不具合や故障が頻発したため、メディアから集中砲火を浴びていた。これはフォードが近年、J.D. Power自動車初期品質調査の評価を急落させていた大きな要因でもある。この調査は、結果が極端に悪ければ消費者の購入意思にも大きく影響しかねないものだ。

MyFord Touchにはいくつかの改良が施されている。タッチパネルの感度は向上され、従来のように強く押さなくても反応するようになり、表示方法もわかりやすくなってレイアウトはシンプルになり、表示される文字サイズも大きくなった。BMWのiDriveの進化と同じく、改良型MyFord Touchも初めて使うユーザーに分かりやすく、使いやすくなっているが、シンプルと言うには程遠く、特にボイスコマンドシステムははっきりと大きな声で言わないと通じないことがある。

2013年モデルからは4気筒のEcoBoost 2.0Lターボエンジンをオプションとして新設定している。トーラスに4気筒エンジンが載るのは、4気筒エンジンが設定された初代モデルが販売終了となった1991年以来のことだ。この4気筒直噴インタークーラーターボエンジンは最高出力243PS、最大トルク37.3kgf·mを発揮し、4気筒EcoBoost搭載モデルの価格はV6エンジンを搭載する標準グレードよりも995ドル高くなる。フォードはこのモデルを低燃費モデルに位置づけており、燃費は正式にはまだ測定されていないが、フォードによると、シティ燃費は9.4km/L、ハイウェイ燃費は13.2km/L程度になると予想されている。一方、標準モデルは変わらずフォードお馴染みの自然吸気3.5L V6エンジンを搭載するが、新たにTi-VCT(吸排気独立可変バルブタイミング機構)が追加され、最高出力が267PSから292PSに、最大トルクが34.4kgf·mから35.1kgf·mにそれぞれ向上し、同時にFFモデルのEPA燃費がシティ8.1km/L、ハイウェイ12.3km/Lとなり、ハイウェイ燃費が0.9km/L改善している。

今回試乗したSHOは、3.5L V6の直噴ターボEcoBoostエンジンを搭載しており、最高出力・最大トルクともに不変で、それぞれ370PS、48.4kgf·mとなる。エンジン3機種すべて6速ATと組み合わせられており、ATは各エンジンに合わせて設定が変えられている。4WDはSHOでは標準で、V6モデルにはオプション設定される。2.0Lターボは前輪駆動モデルのみが設定される。

interior

2012年モデルまでのSHOもまったくうるさい車ではなかったのだが、新型ではピラーをファブリック生地で包み、気密性を向上し、ホイールアーチにライナーを追加するなど、防音性を高める処置が各所に施され、輪にかけて静かになっている。内装の材質も全体的に質感が向上しており、触り心地がソフトな材質が多く用いられ、またフロントシートマッサージ機構がオプションで設定される。また、嬉しい事に、4ウェイ調節式ヘッドレストは標準装備となった。従来モデルのヘッドレストは大きく前方に傾いた形状をしており、快適性の面では中世レベルだった。

エクステリアの変更点は、エンジンフード、フロントグリル、ヘッドランプ、バンパー、LEDテールランプなどで、タイヤは太いものに変更され、車のイメージをより筋肉質なものとしている。また、SHOには加えてフロントグリルがブラックメッシュとなり、リアスポイラーも装備される。また、全車にセルフパーキングシステムやアダプティブクルーズコントロールが新たにオプション設定される。

スタビリティコントロールにも改良が施され、トルクベクタリング機能が追加され、またカーブコントロールというシステムも追加された。これらの機能はコーナリング性能を向上させるためのもので、いずれも車に設置されたセンサーを用いてブレーキを制御している。

ペダルフィールの向上のため、全モデルでブレーキマスターシリンダーが大型化されており、SHOには大径ブレーキも装備される。今回の試乗はウェット条件下のオレゴンの田舎道で行ったのだが、新しいブレーキは、ペダルも操作しやすく、制動力も十分にあって素晴らしかった。ただ、試乗時には酷いブレーキフェードも感じられた。試乗車には、新設定されたパフォーマンスパッケージも装備されており、これにはパフォーマンスタイヤ、20インチホイールが装備され、ファイナルレシオは加速重視となり、サスペンションは硬められ、スタビリティコントロールを完全にオフにできるトラックモードも追加されている。

新型モデルのSHOでは、電動パワーステアリングのチューニングが専用のものとなっている。フォードの電動パワステといえば、たとえばフォード・フレックスなどではフィールに欠ける部分があるが、SHOのステアリングはしっかりしており、クイックで正確だ。

トーラスには4つのグレードが設定されており、ベースグレードの「SE」は27,395ドルだ。ミドルグレードの「SEL」は29,595ドルとなり、装備充実グレードの「Limited」は33,795ドルだ。そして、ハイパフォーマンスモデルの「SHO」は39,995ドルで、今回の試乗車には、ボイスコマンドナビゲーションシステムやアダプティブクルーズコントロール、パフォーマンスパッケージが装備されており、合計6,480ドルがオプション分として上乗せされている。

短い試乗だったが、トーラスSHOはスポーツセダンとして際立った存在であると思う。機敏で、落ち着いており、静粛性も高く、(狭いリアシートに座らない限りは)快適で、加速はドイツ車にも劣らないほどスムーズでリニアだ。エンジンには今回のマイナーチェンジでは手を入れられていないため、パフォーマンスもほとんど変わっていないだろう。となると、加速性能は変わらず、0-100km/h加速は5.2秒という速さを誇り、0-400m加速は13.7秒程度のはずだ。


2013 Ford Taurus SHO First Drive