イギリスの大人気自動車番組「Top Gear」の司会者の1人、ジェレミー・クラークソンが英「The Sunday Times」に寄稿した試乗レポートを日本語で紹介します。
今回紹介するのは、三菱 アウトランダーPHEVのレビューです。

Top Gearの同僚たちによると、新型BMW M3の出来はあまりよくないらしい。速くてグリップも十分あるが、ターボエンジンは従来型のように回転数をどんどん上げて行きたくなるような性格ではなく、制御されすぎており、無機質で、安全志向すぎるそうだ。
M3という車には常に伝説が伴っていた。旧型はスペインのアスカリレーストラックでアウディ RS4とメルセデス・ベンツ C63 AMGに5秒の差をつけて勝利している。サーキットでの5秒といえば、現実世界の1年にも相当する。
ではなぜそれだけの車が突然落ちぶれてしまったのだろうか。その答えはTop Gear magazineの6月号104ページに載っている。そのページの左下に掲載されているコラムによると、BMWのハイブリッドカー、i8のプロジェクトを統括するカルステン・ブライトフェルドの元には、BMWの精鋭のエンジニアが集められたそうだ。つまり、BMWの精鋭はM3を手掛けなかったということだ。
また、ブライトフェルド氏によると、このような布陣がとられたのには明確な理由があるという。i8が未来のスポーツカーだからだ。そう、M3ではなく、i8が。
"人々は将来、ZEV(Zero Emission Vehicle)に乗っていることだろう。かつてカメラメーカーはデジタルはフィルムほど画質が良くないと言っていた。しかし結局それは間違いで、人々はデジタルカメラを使うようになった。デジタルカメラを作ろうとしなかったカメラ会社は次々に潰れていった。CO2問題を解決しなければ、高級車メーカーだって生き残れるはずがない。"
ブライトフェルドさん、私も胸を張ってはっきりと言います。まったくもってその通りだ、と。
i8は間違いなく、私が今年運転するのを一番楽しみにしている車だ。この理由には、この車の外見がハリウッド監督が24世紀を思い描いてデザインしたように見えるということもあるが、一番の理由は、この車が、プリウスのオーナーが望む燃費を実現したポルシェ・911だと言われていたからだ。
この車は「未来」だ。街乗りでは電気のみで走り、モーターとターボエンジンが組み合わせられると、出力は362PSとなり、最高速度は249km/hだ。そして軽量で、4WDで、慎重に運転すれば40km/L以上の燃費を達成することができる。それに、i8はプラグインで充電することも、エンジンを使って充電することもできる。
プリウスは車のあらゆる楽しみを奪うために作られた。そしてi8はプリウスに奪われた楽しみを取り戻すために生まれた。
i8だけではない。ポルシェ 918スパイダーもマクラーレン P1も、ハイブリッドシステムを用い、高いパフォーマンスを実現すると同時に、街中でエコ活動家の厳しい目から逃れることもできる。これらの車をもってすれば、フェラーリやランボルギーニ、アストンマーティンの走りが、まるで恐竜に乗って競馬に出場するように思えてくる。要するに古臭く感じる。
きっと誰もがこういった次世代の車に興味をもつことだろう。ただ問題もある。620,000ポンド持っていなければ918スパイダーは買えないし、P1を買うには100万ポンド近く必要だ。ただ、i8ならあなたも何とか買えるかもしれない。この車はポルシェ 911カレラSカブリオレとほとんど同じ値段だ。もっとも、この車のリアシートはあなたの子供には狭すぎるだろうが。
しかし、i8を買えなかったところで、言うまでもないことだが、あなたはプリウスを欲しがることはないだろう。庭に無用の長物の風車を大量に置いている善人ぶった狂人には見られたくはないだろう。
けれど問題ない。いい車がある。…(ドラムロール)…三菱 アウトランダーPHEVだ。そう、「PHEV」だ。なんとも凄い名前ではないか。まるで『スタートレック』に出てくる宇宙船バード・オブ・プレイの兵器かCIAの無人機の名前のようだ。「今日はPHEVを使おうか」…うむ、なんともいい響きではないか。
何も知らない人が見れば、この車は、学校の送り迎えに母親が使うようなクロスオーバーSUVと同じようにみえるだろう。しかし、よく見れば給油口が左右両方に付いている。
ああ、違う。給油口は左側の口だけで、右側は充電口だ。そう、このクロスオーバーSUVの中身はポルシェ・918スパイダーやBMW i8とほとんど同じなのだ。
この車は十分充電しておけば、すなわち一晩中コンセントに繋いでおけば、およそ30km電気モーターだけで走ることができる。これだけあれば通勤・通学には使えるかもしれないが、ダーリントンやストーンヘンジに出掛けることはできない。
ただ、心配することはない。バッテリーが空になっても2.0Lの普通のエンジンをかければ出先に向かうことができる。また、チャージボタンを押せばエンジンが車を駆動しながら同時にバッテリーにチャージをすることができる。これはなかなか賢い機能だ。
つまり、30km電気で走るためにガソリンを使っているということだ。ここで大きな疑問が生まれてくる。そのガソリンの量はどれくらいなのだろうか。
三菱はその答えを用意してはくれなかった。それに実際にその答えを知るためにはエンジンの中に入ってみるしかなさそうだが、そっちの方がよっぽど無理な話だ。では、このように考えてみよう。エンジン単体で30km走るためにはおよそ2Lのガソリンが必要だ。ではバッテリーを充電するためには2Lのガソリンを使うのだろうか。おそらくはそうだろう。
しかし、この問題には解決策がある。減速時のエネルギーを充電に使えばいい。しかし、このシステムを使うとアクセルから足を離す度に壁にぶつかるように感じてしまう。これが地球には優しいということは分かっているのだが、後ろの車には優しくない。減速があまりに急すぎるうえ、ブレーキランプは点灯しないのだ。
後ろの車を気にしなければ、理論上62.9km/Lの燃費をたたき出すことができる。これは誤植ではない。その上、この車はオフロードを走行することも、トレーラーを牽引することもできるし、装備も充実していて飽きることはなさそうだ。
とはいえ、いくつか欠点がある。最大の欠点は、そもそもこのハイブリッドシステムを抜きにして考えれば、アウトランダーという車自体はそれほどいい車ではないのだ。乗り心地は悪いし、エンジンは魂が抜けているかのようだし、デザインも酷いし、シートは硬いし、パフォーマンスは残念だ。
The Clarkson review: Mitsubishi Outlander PHEV GX4hs (2014)
今回紹介するのは、三菱 アウトランダーPHEVのレビューです。

Top Gearの同僚たちによると、新型BMW M3の出来はあまりよくないらしい。速くてグリップも十分あるが、ターボエンジンは従来型のように回転数をどんどん上げて行きたくなるような性格ではなく、制御されすぎており、無機質で、安全志向すぎるそうだ。
M3という車には常に伝説が伴っていた。旧型はスペインのアスカリレーストラックでアウディ RS4とメルセデス・ベンツ C63 AMGに5秒の差をつけて勝利している。サーキットでの5秒といえば、現実世界の1年にも相当する。
ではなぜそれだけの車が突然落ちぶれてしまったのだろうか。その答えはTop Gear magazineの6月号104ページに載っている。そのページの左下に掲載されているコラムによると、BMWのハイブリッドカー、i8のプロジェクトを統括するカルステン・ブライトフェルドの元には、BMWの精鋭のエンジニアが集められたそうだ。つまり、BMWの精鋭はM3を手掛けなかったということだ。
また、ブライトフェルド氏によると、このような布陣がとられたのには明確な理由があるという。i8が未来のスポーツカーだからだ。そう、M3ではなく、i8が。
"人々は将来、ZEV(Zero Emission Vehicle)に乗っていることだろう。かつてカメラメーカーはデジタルはフィルムほど画質が良くないと言っていた。しかし結局それは間違いで、人々はデジタルカメラを使うようになった。デジタルカメラを作ろうとしなかったカメラ会社は次々に潰れていった。CO2問題を解決しなければ、高級車メーカーだって生き残れるはずがない。"
ブライトフェルドさん、私も胸を張ってはっきりと言います。まったくもってその通りだ、と。
i8は間違いなく、私が今年運転するのを一番楽しみにしている車だ。この理由には、この車の外見がハリウッド監督が24世紀を思い描いてデザインしたように見えるということもあるが、一番の理由は、この車が、プリウスのオーナーが望む燃費を実現したポルシェ・911だと言われていたからだ。
この車は「未来」だ。街乗りでは電気のみで走り、モーターとターボエンジンが組み合わせられると、出力は362PSとなり、最高速度は249km/hだ。そして軽量で、4WDで、慎重に運転すれば40km/L以上の燃費を達成することができる。それに、i8はプラグインで充電することも、エンジンを使って充電することもできる。
プリウスは車のあらゆる楽しみを奪うために作られた。そしてi8はプリウスに奪われた楽しみを取り戻すために生まれた。
i8だけではない。ポルシェ 918スパイダーもマクラーレン P1も、ハイブリッドシステムを用い、高いパフォーマンスを実現すると同時に、街中でエコ活動家の厳しい目から逃れることもできる。これらの車をもってすれば、フェラーリやランボルギーニ、アストンマーティンの走りが、まるで恐竜に乗って競馬に出場するように思えてくる。要するに古臭く感じる。
きっと誰もがこういった次世代の車に興味をもつことだろう。ただ問題もある。620,000ポンド持っていなければ918スパイダーは買えないし、P1を買うには100万ポンド近く必要だ。ただ、i8ならあなたも何とか買えるかもしれない。この車はポルシェ 911カレラSカブリオレとほとんど同じ値段だ。もっとも、この車のリアシートはあなたの子供には狭すぎるだろうが。
しかし、i8を買えなかったところで、言うまでもないことだが、あなたはプリウスを欲しがることはないだろう。庭に無用の長物の風車を大量に置いている善人ぶった狂人には見られたくはないだろう。
けれど問題ない。いい車がある。…(ドラムロール)…三菱 アウトランダーPHEVだ。そう、「PHEV」だ。なんとも凄い名前ではないか。まるで『スタートレック』に出てくる宇宙船バード・オブ・プレイの兵器かCIAの無人機の名前のようだ。「今日はPHEVを使おうか」…うむ、なんともいい響きではないか。
何も知らない人が見れば、この車は、学校の送り迎えに母親が使うようなクロスオーバーSUVと同じようにみえるだろう。しかし、よく見れば給油口が左右両方に付いている。
ああ、違う。給油口は左側の口だけで、右側は充電口だ。そう、このクロスオーバーSUVの中身はポルシェ・918スパイダーやBMW i8とほとんど同じなのだ。
この車は十分充電しておけば、すなわち一晩中コンセントに繋いでおけば、およそ30km電気モーターだけで走ることができる。これだけあれば通勤・通学には使えるかもしれないが、ダーリントンやストーンヘンジに出掛けることはできない。
ただ、心配することはない。バッテリーが空になっても2.0Lの普通のエンジンをかければ出先に向かうことができる。また、チャージボタンを押せばエンジンが車を駆動しながら同時にバッテリーにチャージをすることができる。これはなかなか賢い機能だ。
つまり、30km電気で走るためにガソリンを使っているということだ。ここで大きな疑問が生まれてくる。そのガソリンの量はどれくらいなのだろうか。
三菱はその答えを用意してはくれなかった。それに実際にその答えを知るためにはエンジンの中に入ってみるしかなさそうだが、そっちの方がよっぽど無理な話だ。では、このように考えてみよう。エンジン単体で30km走るためにはおよそ2Lのガソリンが必要だ。ではバッテリーを充電するためには2Lのガソリンを使うのだろうか。おそらくはそうだろう。
しかし、この問題には解決策がある。減速時のエネルギーを充電に使えばいい。しかし、このシステムを使うとアクセルから足を離す度に壁にぶつかるように感じてしまう。これが地球には優しいということは分かっているのだが、後ろの車には優しくない。減速があまりに急すぎるうえ、ブレーキランプは点灯しないのだ。
後ろの車を気にしなければ、理論上62.9km/Lの燃費をたたき出すことができる。これは誤植ではない。その上、この車はオフロードを走行することも、トレーラーを牽引することもできるし、装備も充実していて飽きることはなさそうだ。
とはいえ、いくつか欠点がある。最大の欠点は、そもそもこのハイブリッドシステムを抜きにして考えれば、アウトランダーという車自体はそれほどいい車ではないのだ。乗り心地は悪いし、エンジンは魂が抜けているかのようだし、デザインも酷いし、シートは硬いし、パフォーマンスは残念だ。
The Clarkson review: Mitsubishi Outlander PHEV GX4hs (2014)
