今回は、豪州「Drive.com.au」によるプロトン・スプリマS GXRの試乗レポートを日本語で紹介します。


Suprima S


バッジは多くを語る。ただし、多くは一部の車好きにしか通じない。そして車好きのコミュニティの間では、「STI」とか「AMG」といった短いアルファベットの組み合わせだけのバッジでさえ特別な何かを意味することがある。けれど、この車のように、大文字でTURBOとあり、さらに"Handling by Lotus"と続くバッジが車についていれば、例え車好きでなくともそのバッジが意味するところを理解することができるだろう。

プロトンは気取ったバッジではなく、分かりやすく自社のハッチバックの性能を示したバッジを付けている。確かにこれは表現としては全く間違ってはいないのだろうが、消費者の立場からしてみれば騙されたような、馬鹿にされたような気分になってしまう。このバッジはスポーティさを確約しているようでいて、実のところ何一つ確かではない。

スプリマSには4気筒1.6Lのターボエンジンが搭載されているのだが、最高出力はわずか140PSと、2.0Lのマツダ3(日本名: アクセラ)よりも15馬力も劣っている。現在はCVTモデルのみが設定されており、6速MTは2014年に発売される予定だ。

CVTはそれなりにスムーズではあるが、結構なエンジンノイズが聞こえてくる。多くのCVT車同様、スロットルレスポンスは悪く、坂道やアクセルを踏み込んだ時などはエンジンがかなり唸る。パドルシフトを用いれば7段マニュアルモードでの変速が可能で、こちらを用いたほうがエンジンは思い通りに回ってくれる。

燃費は11.0km/Lと、一般的なハッチバックはおろかポルシェ・パナメーラの3.6L NAモデルにすら劣り、0-100km/L加速も9.9秒と遅い。

この車は26,590豪ドルで、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIやフォード・フィエスタSTといった類のホットハッチのライバルでは全くない。プロトンは、マツダ3やホールデン・クルーズ(別名: シボレー・クルーズ)のより安価な対抗馬としてこの車を投入しており、プロトン曰く、こういったモデルとの相違点として「並外れた性能」や「比類なきドライビングエクスペリエンス」があるのだという。

高く評価されていたプロトン・サトリアGTiが2002年に販売中止となって以降、「Handling by Lotus」のバッジが付けられるのはこのモデルが初めてだ。

ところがこの新型車は、パワーは低下しているし、ステアリングは重い上に反応に乏しく、特に一定以上ステアリングを回してからの反応性が酷い。その上凸凹を乗り越えればショックがダイレクトにステアリングに伝わってくるし、フォード・フォーカスのような鍛え上げられたモデルと比べてしまうと、ボディはまるで弾むかのような動きをする。

interior

ただ、室内に目を移せば、ダッシュボードはスタイリッシュで、今風のソフトタッチなプラスチックが用いられている。シルバーのトリムは素晴らしく、この車の4ドアセダンバージョンであるプロトン・プレヴェが古臭い木目調トリムを使っているのとは対照的だ。後部座席には十分なスペースがあり、平均以上の身長の人が乗ってもヘッドルームは十分あるだろう。安全評価は5スターだが、コンパクトカーでも今やこれくらいは当たり前になっている。

我々が試乗したのは上級グレードのGXRで、装備は充実していた。7インチスクリーンのカーナビゲーションシステムやバックカメラ、前後パーキングセンサーなどが標準装備だ。このナビはAndroidのOSで動いており、あたかもスマートフォンのアプリをアップデートするように更新することができる。また、スマートフォンやモバイルネットワークと繋げば車内にWi-Fiネットワークを構築することができ、他のWi-Fi機器でインターネットに繋ぐことができる。ところが、我々はこのナビをテストすることができなかった。というのも、試乗車を受け取ってすぐにスタート画面でフリーズしてしまったからだ。再起動しようとしてもできず、ようやく再起動に成功したのは試乗が終わった時だった。

この不具合と同様なことが車自体にも言える。カタログ上では実に素晴らしいように思えるのだが、その実はそんなことはない、ということだ。


Proton Suprima S GXR: First drive review