米国「CNET」によるアキュラ RDXの試乗レポートを日本語で紹介します。


RDX

この堅牢なシャシには素晴らしいエンジンが積まれている。ボンネットには3.5Lの新設計のV6エンジンが収まり、最高出力277PS、最大トルク34.7kgf·mを発揮する。しかしこれだけのパワーはいつも必要というわけではないだろう。だからRDXにはちゃんと燃費を節約する仕掛けがある。


パワートレイン
街中での低速走行時や高速で流している時など、負荷が少ない状況では、可変シリンダーシステム (VCM) によって気筒休止が行われる。渋滞の時や駐車場でゆっくりと走行しているときなどは、V6の片バンクが丸々休止され、直列3気筒となる。また、高速道路で流れに沿って走っているときは、V6のそれぞれのバンクの1気筒ずつが休止され、V型4気筒としてはたらく。そしてパワーが必要な加速や登坂の時には、アクセルを踏むとすぐに完全なV型6気筒エンジンとなる。このエンジンの凄いところは、走行状況に応じて、コンスタントかつスムーズにこれら3つのモードを切り替えることができるという点だ。運転していても言われなければこれが気筒休止エンジンだとは気づかないはずだ。

このエンジンにはスポーツモードやマニュアルモードがついた6速ATが組み合わせられている。マニュアルモードではパドルシフトを使って手動で変速することができる。このATはそれなりにいい。スポーツモードでは高回転になり、コーナー直前でブレーキをかけるとギアがホールドされる。ノーマルモードではよりスムーズかつナチュラルな変速スタイルとなる。


4WDシステム
RDXには4WDモデルもあるが、アキュラ・TLやMDX、そして先代RDXのSH-AWDのようなハンドリング命の4WDではない。この4WDシステムはインテリジェントコントロールAWDと呼ばれる全く新しいシステムで、基本的には前輪駆動を維持し、乾燥路面での発進時やコーナリング時にはリアに25%の駆動力を発生する。

そして路面が濡れていたり滑りやすかったりするとさらに駆動配分が変化する。非常に滑りやすい路面では、4WDシステムが前輪への出力配分を減らし、前後駆動力配分をおよそ50:50として全体的な出力も抑える。このシステムはSH-AWDほど高度な制御が行われているわけではなく、SH-AWDのような後輪トルクベクタリングシステムはない。

この4WDはパフォーマンスのためのシステムではなく、あくまで安全のための4WDであるということを留意しておく必要がある。

この4WDシステムを好むと好まざるとにかかわらず、システム全体の重量は軽くなっており、燃費性能に寄与している。RDX AWDのEPA燃費は、シティ燃費/ハイウェイ燃費/複合燃費がそれぞれ8.1km/L/11.5km/L/9.4km/Lとなる。この数値はそれぞれFFモデルよりわずか0.4km/L悪化しているだけだ。ちなみに私が高速道路も街中も含むルートで試乗した際の燃費は9.2km/Lだった。


走行性能
RDXのシャシは十分な強度があるようで、ショックを乗り越えた際にも軋むような音がしたりガタついたりするようなことはなかった。ただ、サスペンションは硬く、それは特に舗装がひび割れているような道路では顕著で、そういう道路ではフレームは動じないが乗客はひどくゆすられた。この硬いサスペンションのせいで舗装の悪いコーナーを曲がる際には不安定感が出てしまう。同乗者も私も、コーナーでは衝撃が吸収されることなくダイレクトに伝わっていたと感じた。

RDXの電動パワーステアリングは全くと言っていいほど路面の状況を伝えてくれない。これほど硬い足の車にはもっと重くてダイレクトなステアフィールを求めたいのだが、RDXはスポーツカーの足回りにクルーザーのような操舵感覚が組み合わさっているように感じた。これはスポーツ指向のクロスオーバーSUVなのだろうか? それともコンフォート指向のクロスオーバーなのだろうか?

RDXには電子制御スロットルや電動パワステが使われているが、MDXに装備されるような素晴らしい運転補助技術は設定されていない。車線逸脱防止システムやアダプティブクルーズコントロール、自動ブレーキなどが装備されないだけではなく、ブラインドスポットモニターやパーキングセンサーなども装備できない。バックカメラが標準装備なのは嬉しいのだが、アキュラが安全技術に定評があるブランドだということを考えればRDXはスパルタンとも思えてしまう。とはいえ、このスパルタンさをいいと思うか悪いと思うかは人それぞれだろう。


ナビゲーションシステム

Dashboard

ダッシュボード最上部には8インチのナビゲーションシステムのディスプレイが位置している。しかし、この操作用のダイヤルやボタン類とディスプレイの間には、オーディオ用の横長のモノクロ液晶とその操作類が配されており、ナビ画面と操作部が離れてしまっている。

上部にはオーディオ用の操作部があり、その下にはナビの操作部が、更にその下にはエアコンの操作部があり、操作時はいちいちそれぞれに手を伸ばさなければいけない。他の車はもっと統合的に操作ができるようにしているし、そちらのほうが高速道路で操作しなければいけないような場面でも安全だ。

目的地の設定や楽曲の選択にボイスコマンドを使うこともできるのだが、しかし反応がすごく遅い。ナビの画面は解像度が低いし、スイッチ類はどこか古臭いし出来も悪い。目的地を入力すると途中で入力予測が出てくるのだが、これがまた的はずれな上、次の文字を入力するためには逐一キャンセルしなければいけない。

オーディオ用モノクロディスプレイもいいものだとはいえない。オーディオの情報とエアコンの情報と時計を横一列に表示しており、一目で情報を得ることは難しいのだ。

ただ、いい部分もある。オプションで設定されるパナソニックのELSオーディオシステムは素晴らしい。

結論
この車のナビ類は急ごしらえな感じがするし、改善を待ったほうが良さそうだ。それにRDXはスポーティSUVなのかコンフォートSUVなのか白黒つけるべきだ。ただ、そうはいってもRDXの基本的な部分は悪くない。ステアリングをもう少し重くしてフィードバックをもっと得られるようにすればこの車はずいぶん良くなるだろう。


2015 Acura RDX Review