米国「Cars.com」による、トヨタ・アバロンの試乗レポートを日本語で紹介します。


Avalon

あなたの父親の書斎には豪華な椅子はなかっただろうか。クッションが厚くて座り心地のいい椅子だ。

アバロンハイブリッドはそんな椅子のトヨタ的な解釈だ。ドライバーにとっても乗客にとっても快適で、運転しやすく、速さやスポーティさは欠落している。

アバロンハイブリッドは燃費がいい。それはまさしく父親がよく言う「お金を節約するには使わなければいい」という言葉ようだ。

現行型のアバロンハイブリッドは昨年発表され、今年に2014年モデルとして改良が施された。改良の主たるものとしては、バックカメラが全グレードに標準装備されたことが挙げられる。アバロンハイブリッドは「XLE Touring」、「XLE Premium」、「Limited」の3グレード構成で、今回はLimitedに試乗した。

ライバルとなるのはホンダ・アコードハイブリッドやフォード・フュージョンハイブリッドだ。


エクステリア
トヨタいわく、デザインに「動きや路面を掴むようなイメージ」を取り入れ、「アスリート」らしさを表現しようとした、だそうだ。ただ、こういう文句はただの言葉遊びのようで、どこか平凡に思える。まあきっと、リアの造形はダイナミックなつもりなんだろうし、サイドウインドウやデュアルエグゾーストにはクーペの遺伝子が組み込まれているんだろう。凄い凄い。

車のリアやサイドに装着された青い「Hybrid」のエンブレムは、財布にも地球にも優しいことを誇らしく示している。

ドライビングインプレッション
アバロンハイブリッドは2.5L 4気筒エンジンにモーターが組み合わされており、EPA燃費はシティ燃費17.0km/L、ハイウェイ燃費16.6km/L、複合燃費17.0km/Lとなる。この数値は確かに複合燃費が10.2km/Lである3.5Lの非ハイブリッドモデルよりはいいが、ハイブリッドセダンとしてはあまりいい値とはいえない。フォード・フュージョンハイブリッドは複合17.9km/Lだし、ホンダ・アコードハイブリッドは複合20.0km/Lなのだ。

この車の一番駄目な部分は運転し始めてすぐに分かる。ブレーキペダルの反応がひどく極端で、プレーキを踏むたびに鞭打ちになりそうだ。どんなに繊細な操作をしようと試みてもブレーキを踏むたびにショックがあるのだ。

一方で、乗り心地はソフトで、路面の粗い高速道路を走ってもしっかり衝撃を吸収してくれる。

トヨタは室内の静粛性に随分と注力したようで、フロントウインドウおよびフロントサイドウインドウには遮音加工がされており、ピラーには防音発泡ウレタンが注入されている。また、リアシートの表面の素材にも遮音のための加工が施されているらしい。ただ、高速道路でのタイヤノイズの対策は不十分に思われた。


インテリア

Avalon interior


車に乗り込んですぐに、この車はトヨタではなくレクサスなのではないのかと思ってしまった。立て付けはしっかりしているし、シートは本革だし、それに、ダッシュボードからドアパネルからアームレストからカップホルダーに至るまで高級感のある触り心地だったのだ。ただ一方で、夫は別の感想を持ったようで、装飾過剰で悪趣味だと言っていた。まあ確かに、ブラックのカーペット、ブラウンの木目調フィニッシャーやブラウンのカップホルダー周辺のレザー、そしてブラックのステッチ入りのベージュのレザーシートという3色のコントラストは雑然とした印象を与えてしまうかもしれない。是非とも2色くらいにしてほしいものだ。

エアコンの下にあるセンターコンソールのエアコン操作系の下にある収納ボックスは非常に使いやすかった。底はゴム製で、12V電源のほか、AUX入力やUSBポートも装備されており、2台の携帯電話を置くことができる。

私の9歳と11歳の下の娘達にとっては、リアシートのレッグルームは十分すぎるくらいで、14歳の娘が大きなリュックサックを膝の横において助手席に座っても、足元には十分なスペースが残っていた。アバロンのリアシートのレッグルームは実に996mmなのだ。ちなみに、フォード・フュージョンハイブリッドは973mm、ホンダ・アコードハイブリッドは978mmだ。

リアシートに座った下の娘たちは、前席アームレストの後部にある操作パネルでリアシートからもエアコンの風量だけでなく温度まで調節できることを喜んでいたようだった。


Bluetoothハンズフリーフォンは非常に簡単に接続でき、同様にBluetooth接続でのオーディオストリーミングも簡単にできた。

6.1インチのタッチスクリーンはタッチパネル操作もダイヤルでの操作も可能だ。ダッシュボードにはボタンがたくさん配置されているが、使い勝手は悪くなかった(とはいえ、他の編集者はあまり気に入っていなかったようだが)。画面はタッチするとすぐさま反応してストレスのない操作ができた。

シートヒーターやオプションのシートクーラー、それに風量の調節はダイヤル式で、シートヒーターおよびシートクーラーのダイヤルは使わない時は下に埋まっており、使うときにだけせり上がってくる。

私は気づかなかったのだが、夫によると、ドア側のアームレストは後ろに行くにつれて幅が狭くなっており、特に背が高い人がシートを後ろによせて使うと肘が滑り落ちてしまって使い心地が良くないそうだ。


荷室
アバロンハイブリッドはガソリンエンジンモデルよりも57Lトランクスペースが狭くなっている。ただそれでもトランク容量は396Lであり、ほかのハイブリッドのライバルたちよりは大きい。ちなみにアコードハイブリッドのトランク容量は350Lで、フュージョンハイブリッドは340Lだ。ただ、フュージョンハイブリッドだけはリアシートを倒すことができる。

アバロンのトランク開閉は電動式ではなく、車内のトランクオープンボタンを押してもトランクはわずかにポップアップするだけで手で開ける必要がある。しかも、油圧ダンパーでちょっと持ち上げれば自動的にトランクが全開になるのではなく、持ち上げた分しか開かないのだ。最初は勝手にトランクが持ち上がるものだと思って、一度頭をぶつけてしまった。

室内が十分に豪華なのと比べると、トランクスペースは金属パーツが露出していたり、ケーブル類が見えていたりと少し残念だった。


安全性
アバロンはIIHSの全ての安全テストで4段階のうちの最高評価を得ている。また、合衆国運輸省はアバロンハイブリッドの衝突安全性能を最高の5つ星評価としている。

一般的な車に装備されるようなエアバッグの他に、トルソーサイドエアバッグが5席分と、ドライバー用のニーエアバッグが装備される。

アバロンハイブリッドには、2014年モデルから全グレードにバックカメラが標準装備となっており、これは実に便利なのだが、ただパーキングセンサーは装着されていないようだ。ブラインドスポットモニターとリアクロストラフィックアラートシステムは「XLE Touring」にオプション設定され、「Limited」には標準装備となるが、それ以外のグレードでは選択できない。


総括
アバロンハイブリッドはハイブリッドカーの中でもかなり高額なモデルだ。安くて燃費の良い車を求めている人は見向きもしないだろう。高級感のあるちょっと燃費の良い車がほしいなら、試乗してみる価値はあるだろう。


2014 Toyota Avalon Hybrid Review