光岡は日本最小の自動車メーカーであり、そんな会社が生み出した「スーパーカー」がオロチです。

今回は、そんなオロチが海外の自動車メディアにどのようにして取り上げられたか紹介したいと思います。英国「Auto Express」によるオロチの試乗レポートを日本語で紹介します。

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オロチとは日本語で大きな蛇を意味しており、そしてこの車もその名の通り野性的な風貌だ。ただ、残念ながらリアの方は「飼い慣らされた」ような印象だ。この車は技術的にも品質的にもなんの問題もないが、この車の特性はスーパーカーのそれとは程遠いものだ。その個性的な風貌と出来のいいサスペンションには、もっとパワフルで官能的なエンジンのほうが似合うだろう。もしイギリスに輸入されるとすれば、値段は随分跳ね上がるだろうし、そうなればヨーロッパの錚々たるスーパーカー達と並ぶことになる。

外見はまるで別の惑星から来たかのようだが、この型破りのスーパーカーこそが日本が考えた「フェラーリ」だ。

この車にはホンダとレクサスの部品が使われているらしいが、しかしこの手作りのボディは他の何にも似ていない。そもそも光岡という会社はレプリカ車のメーカーとしてスタートしている。日産車をベースにダイムラーのレプリカを作ったり、ダイハツ車をベースにライレーのレプリカを作ったりしていた。そして現在では日本の第10の自動車メーカーとされている。 そしてこのオロチこそ、光岡史上最もワイルドな車だ。

オロチの歴史は2001年まで遡る。この年の東京モーターショーで、ホンダ・NSXをベースとしたスーパーカーとして初公開された。

この車はひどく印象的で、私が東京でオロチを試乗した時も、歩行者の誰もが目を離せないようだった。特徴的なグリルや2灯ヘッドランプ、うねるようなボディ、それら全てが人目を引くようにデザインされているのだから、それも当然だろう。リアの垂直ウインドウやライト類は明らかにフェラーリを意識していると分かる。そしてオロチのデザインはイタリアの伝説的スーパーカーに劣らず人目を引く。

ところが、ドアを開けると途端にそんな感慨も陰り始める。低い車高や太いサイドシルのせいで、昔のスーパーカーのように乗り込むのは一苦労だし、一旦乗り込んだらそこにあるのは落胆だ。本革はふんだんに使われているし、その品質も素晴らしいのだが、エクステリアに見合うようなドラマチックさがない。5速ATを操作するシフトレバーはSUVのレクサス・RXのもので、これが快適性のためにパフォーマンスが犠牲になっていることをすでに予感させる。

オロチのエンジンはレクサスの3.3L V6エンジンだが、少なくとも2気筒は足りていない。ミッドシップレイアウトや個性的なエクステリアに似合わず、 234PSのそのエンジンは全くスーパーカーらしくない。327N·mのトルクは、失望するようなパフォーマンスしか発揮しない。

オロチは光岡の創業者である光岡進の主導により開発された。彼は誰もが運転できる車という目標を持ってこの車の開発を進め、実際にその目標はしっかりと達成された。この車に獰猛さを求めたところで、実際はただの「クルーザー」でしかない。0-100km/h加速は7.0秒と遅く、排気音もドラマに欠けている。

こんな性能では、マツダの元チーフテストドライバーによってチューニングされた折角のダブルウィッシュボーンサスペンションやスペースフレームシャシがもったいない。ただ、オロチの乗り心地は驚くほどよく、ハンドリングはスポーティさとは程遠いものの、快適さとハンドリングのバランスはなかなかいい。高速コーナーでは素晴らしく安定しているが、スポーツカーらしさが欠落している。

ブレーキにはホンダ・レジェンドのものが用いられているが、これは不安なく止まってくれるし、十二分な性能を発揮してくれる。問題は、オロチがNSXよりも重く、遅く、そして実用性も劣っているという点だ。 とはいえ、出る杭は打たれるような文化を持つ日本で、この車は大成功を収めている。

光岡の製造能力を超える台数が受注されており、今後は製造能力を月に6台まで増強していくそうだ。 ただ、やはりこのセンセーショナルな外見に見合うようなもっとパワフルなモデルが存在しないことが残念でならない。


Mitsuoka Orochi Reviews