スズキのアルト、と聞けば日本人の多くが660ccの黄色いナンバーのついた軽セダンを思い浮かべるでしょうが、異国ヨーロッパの地においては日本でいうアルトよりも少し大きな普通車が「アルト」の名称で販売されています。

今回は英国「Top Gear」による、日本のアルトとは違ったヨーロッパのアルトの試乗記を日本語で紹介します。


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どうしてもインド製の車が買いたいという人に用意される選択肢はタタ・ナノだけではない。アルトはデリーのマルチスズキにより設計・製造され、インドではスズキ・Aスターとして販売されている。これはトヨタ・アイゴ、シトロエン・C1、プジョー・107の3兄弟やヒュンダイ・i10、フォード・Ka、そして言うまでもないがバッジエンジニアリング車の日産・ピクソと競合するモデルだ。このクラスはますます混戦を極めている。『クイズ・ミリオネア』で例えれば、アルトは決してミリオネアではなく、100万円くらいでドロップアウトしてしまう挑戦者のようだ。つまり、手堅くはあるが、存在感はないということだ。

アルトのパワーソースは1.0Lの3気筒で最高出力は68PS、最大トルクは9.1kgf·mと、トヨタ-PSAの3兄弟に近い値だ。これは最高だとはいえないが、それでも楽しいエンジンだ。エンジンをつけると2ストロークエンジンのようなカタカタとした音がするし、回転を上げると大音量で唸りだす。0-100km/h加速時間は14秒だが、フル乗車でなければそれよりも速く感じられた。スズキいわくヨーロッパの道路向けにチューニングしたというその乗り心地は、活発なC1やアイゴと比べるとつまらない。

びっくりしたことに、ギョロ目の可愛らしい外観とは裏腹に、内装はまるで刑務所のようだった。最上級グレードでさえ、グレーの単調な内装だったのだ。インパネは硬質で機能性一辺倒であり、きっとスズキは予算との折り合いがつけられなかったのだろう。

実用性のためにデザインが犠牲にされた、とも言えなさそうだ。荷室は129Lと狭くて使いづらいし、リアシートは子供用に設計でもされたのかと思うほどに狭い。

そうはいっても、アルトは悪い車ではない。チープだが経済的で、CO2排出量103g/kmという数値はクラスでも最良だ。ただ、アイドリングストップを装備するなどして100g/kmを下回れば、道路税が免除されて他のライバルに対して大きく有利になるはずなのだが…。アルトと同じ道路税区分「B」にあり、同じくらいの値段でありながらもっといい車はいくらでもある。シトロエン・C1はアルトよりも楽しいし、ヒュンダイ・i10はより洗練されているし、フォード・Kaはデザインが優れている。大ヒットなど、この車には到底見込めないだろう。


Suzuki Alto SZ4 - road test