インフィニティ・Q70(日本名: 日産・フーガ)は、北米において日本に先立ってマイナーチェンジを受け、エクステリアデザインが刷新されました。

また、このマイナーチェンジを機に、日本仕様シーマに相当するロングホイールベースモデルのQ70Lも北米に追加投入されました。今回は、カナダ「Auto123.com」による、インフィニティ・Q70Lの、日本仕様には存在しないV8エンジン搭載モデルの試乗レポートを日本語で紹介します。


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Q70…それは新型モデルではなく、M56の車名が変わっただけのモデルだ。ミッドサイズセダンのQ70はQ50よりも大きなエンジンを積み、広いスペースをもつ。そして新たに登場したロングホイールベースモデルのQ70Lは、1クラス上のドイツ製高級セダンも競合ターゲットとしている。


概要
Q70には2種類のエンジンが設定される。3.7L V6と5.6L V8だ。今回は5.6Lモデルについてのみレビューを行う。 というのも、ロングホイールベースモデルの試乗車として用意されたのが5.6Lだけだったからだ。

5.6L V8エンジンは、最高出力422PS、最大トルク57.2kgf·mを発揮する。アメリカ仕様のQ70には3.7Lと5.6Lの標準ホイールベースモデルにFRモデルも設定されるが、カナダに投入されるQ70は4WDモデルだけのようだ。もっとも、これはインフィニティが冬は雪で覆われるカナダ市場のニーズを理解しているゆえなのだが。

トランスミッションは全グレード共通で7速ATであり、3.7Lのスポーツグレードにはパドルシフトも装備される。


走行性能
今回の試乗車はニューヨークで受け取ったのだが、喧騒と車で満ちた街中での運転はあまり気が進まず、喧騒を逃れてニュージャージーへと向かった。

7速ATは、ギアが多すぎると思うこともあったが、それでも素晴らしかった。スポーツモードでも、アクセルを攻撃的に踏み込んだ時にはトランスミッションがエンジンとうまく繋がって加速してみせた。

ハンドリングはまさにインフィニティ、というものだった。Q50がアダプティブステアリングという最新鋭の技術を使っているのに対し、Q70Lは従来と変わらぬ車速感応式のラックアンドピニオン電動パワーステアリングを採用している。ステアリングは、基本的にはダイレクトだが、高速のタイトコーナーではどこか曖昧な感覚を残し、大きな車を運転しているという感覚になった。

そうはいっても、4WDシステムはコーナリングを安定させており、また窓を閉めていてもV8エンジンの官能的なサウンドは耳に入ってきた。というか、窓を開けるとV8サウンドは耳障りなくらいだ。


内外装
これは実にスタイリッシュなセダンだ。標準ホイールベースのモデルはQ50と見紛うようなデザインだが、Q70Lは弟分のモデルとははっきりと違ったプロポーションをしており、荘厳な雰囲気を醸し出している。

特徴的な流れるようなボディラインに加えて、インフィニティの新しいフロントグリルが新たに装着され、このデザインの魅力は誰も否定出来ないだろう。 黒系の深みのある色を選べば、まさに高級車といった風貌だ。

内装は、マイナーチェンジ前と同様に光沢のあるウッドパネルもしくはクロームパネルがソフトな素材と組み合わせられている。 シートにはブランドカラーでもある紫色でレザーシートに「INFINITI」の文字の刺繍が施されているが、これはどうも微妙だ。センターコンソールは典型的なインフィニティらしいもので、悪くない。

きっとこの車では他のどの席よりもリアシートに座ってみたくなるだろう。レッグルームは1,062mmと長大で、FFベースのアウディ・A6や一つ上のクラスのBMW 7シリーズ(標準ホイールベース)やジャガー・XJをも上回る。成人男性の平均的な股下の長さが84cmで あることを考えれば、Q70Lは人類よりも足の長い動物をターゲットにしているようだ。言うまでもなく、この後部座席はとても快適だった。

不満は何かと言われれば、リアシート用のサイドサンシェードやフットレスト、バニティミラーが装備されていないことだ。それから、センターコンソールは、木目のデザイン自体は素晴らしいが、iPhoneやリップクリーム、タブレット菓子なんかを置く場所が灰皿くらいしかないのは不便だ。

 
比較
自動車メーカーは「どうだ、うちの車はクラス最高の◯◯があるんだぞ」ゲームに夢中になっている。私はそういう宣伝文句にうんざりしている。ライバルがどうかとか、そんなことは気にする必要はないはずなのだが。そんなものは顧客が検討することだ。

Q70Lに関して言えば、アキュラ・RLXやアウディ・A6、あるいはキャデラック・CTSなどと比較検討するだろう。 (レッグルーム以外で)Q70Lが優れている部分は、4WDが標準だということだ(言うまでもなく、アウディも同様だが)。


2015 Infiniti Q70L 5.6 AWD First Impression