英国「Top Gear」による日産 キャシュカイの試乗レポートを日本語で紹介します。

ここ英国で大成功を収めたキャシュカイは、街に溢れるほどに走っているが、それを見るたびに私の見る目のなさを痛感する。7年前、日産はオフロードカーの見た目と乗用車の実用性を兼ね備えたこの車を発売した。私はこの車は失敗するだろうと予想していた。当時クロスオーバーSUVは「チェルシー・トラクター」(注)と言われ疎まれていたし、誰も本格的な4WDではないこんな車は買わないだろうと思ったのだ。だから私は、同じようなエセSUVであるホンダ・HR-Vやマトラ・シムカランチョと同じように失敗するだろうと考えた。この上、キャシュカイなんて変な名前だったのだから。
(注: チェルシーは富裕層の多い町であり、富裕層は大型四駆を好んで乗っていたが、そんな町中では無用の長物の大型四駆が「チェルシーのトラクター」と嫌味混じりに呼ばれていた)
そもそも、当の日産自体、こんな結果は予測していなかったのだ。 結局、キャシュカイは日産が想定した3倍を売り上げた。そしてこの成功は、業界にちょっとしたセンセーションを巻き起こした。日産のアンディ・パーマー副社長はTop Gearにこのように語っている。
「キャシュカイはあくまでも実験的なモデルとして生まれたものでした。当時、日産はヨーロッパにおいて、他の日本の自動車メーカーにも後れを取っていたのですが、キャシュカイによって社内が大きく変わりました。キャシュカイは我々に挑戦する勇気を与えてくれたんです。キャシュカイの成功なしでは、IDxも、ブレイドグライダーも、ジュークも、決して誕生することはありませんでした。多少失敗することがあっても、我々は挑戦者でありたい、そう思うようになりました。」
そしてそのキャシュカイは2代目へと進化した。 エンジニアいわく、2代目も初代と同じ挑戦心が注がれて開発されたという。しかし現実はというと、新型はただの改良されたキャシュカイでしかなかった。しかしそれも当然のことだろう。かつてライバル不在だったこのモデルには、今や大量のライバルがいる。にもかかわらず先代のモデル末期でさえ、そんな混戦にキャシュカイは一人勝ちしていたのだから、ここで大きく変えるわけにはいかなかったのだろう。とにかく、それがコンセプト的に新しいかどうかは置いておいても、ルノー日産アライアンスの共通モジュールを用いた最新のプラットフォームを使うなど、最新の技術が惜しみなく投入されている。
スタイリングは先代から激変しているというほどではないが、細かい部分をみればどこも違っており、新型であるということがひと目でわかる。 宝石をイメージしたヘッドランプ、より大胆になったフロントグリル、そして個性的なプレスライン…。内装では、硬いプラスチックがなくなり、先代とは違って退屈さのないものになっている。フロントシートも素晴らしい。
少し大型化し、装備内容はより充実しているにもかかわらず、車重は先代よりも40kg軽量化されている。 大型化された分は居住性の向上に充てられており、先代で不評だった狭いリアシートのスペースを改善している。荷室も改善しており、大半のグレードには荷物が散乱するのを防ぐなかなか有用な仕切りが装備されている。
この車は速さを求める車ではない。エンジンは静粛性と経済性に優れているが、パワフルではない。エンジンバリエーションは2種類のガソリンエンジンと2種類のディーゼルエンジンが設定されるが、ディーゼルエンジンで最高132PS、ガソリンエンジンでも最高152PSに留まる。1.5Lのディーゼルエンジンはおそらくクラスでも最も優秀な99g/kmというCO2排出量を誇るが、こちらは112PSという非力さに目をつぶる必要がある。追い越しの際にはギアを2つ落とさないといけないし、運転するとなんだか神経質になって年を取ったような気分になってしまう。
ディーゼルなら132PSの1.6Lを選んだほうが良い。1.5Lと全く違うというほどではないが、それでも運転していらいらするようなことはない。1.6LではMT以外にマニュアルモード付きのCVTも選べる。このCVTは他のCVT同様にスムーズであるが、他のCVTとは違って変にやかましいエンジン音をうならせることはない。私はオートマ車、特にCVT車は嫌いだが、このCVTは私を不快にさせることもなく、なかなか良さそうだ。
パワーは十分とはいえないが、それでも楽しい車ではある。コーナーではちゃんと曲がってくれるし、VDCのセッティングもよく、俊足な印象を受けた。
ブレーキも優秀で、ピッチングを防いでくれる機能が備え付けられている。この機能はオフにすることができないので比較することはできなかったが、制動時の挙動は綺麗なものだった。乗り心地は最高のハッチバック(ゴルフや、あるいはシビック)に比べると粗いが、車高の高いクロスオーバーとしてはいいといえる。私は4WDよりもFFモデルのほうが好きだ。FFモデルはリアサスがマルチリンクからトーションビームに変更されている。変更の理由は軽量化のため、車体下部の空力性能の向上のため、そしてコストカットのためだそうだが、これによってタイヤノイズも減少しているように感じられた。
カタログを見ると、新技術も多く投入されているようだ。一番安いグレードでも、衝突回避システム、車線逸脱警報、速度標識認識システム、左右のパーキングセンサーがセットオプションでわずか450ポンドで装備できる。最上級グレードの「Tekna」では、このセット装備のほかに、ブラインドスポット警報やアラウンドビューモニター、自動駐車システム、Google連携ナビ、LEDヘッドランプなどが装備される。
不思議なことに、ライバル車がどんどん出ているにもかかわらず、キャシュカイはニッチにしっかりとはまった車のように思える。フォード・クーガやフォルクスワーゲン・ティグアン、ホンダ・CR-Vよりも安く経済的でありながら、ヒュンダイ・ix35や三菱ASX(日本名: RVR)といったアジアのより安いモデルよりも実用的で魅力的なのだ。
私のような先見の明のない人間からしても、キャシュカイはきっと成功すると思わせる、そんな車だ。
Nissan Qashqai Driven

ここ英国で大成功を収めたキャシュカイは、街に溢れるほどに走っているが、それを見るたびに私の見る目のなさを痛感する。7年前、日産はオフロードカーの見た目と乗用車の実用性を兼ね備えたこの車を発売した。私はこの車は失敗するだろうと予想していた。当時クロスオーバーSUVは「チェルシー・トラクター」(注)と言われ疎まれていたし、誰も本格的な4WDではないこんな車は買わないだろうと思ったのだ。だから私は、同じようなエセSUVであるホンダ・HR-Vやマトラ・シムカランチョと同じように失敗するだろうと考えた。この上、キャシュカイなんて変な名前だったのだから。
(注: チェルシーは富裕層の多い町であり、富裕層は大型四駆を好んで乗っていたが、そんな町中では無用の長物の大型四駆が「チェルシーのトラクター」と嫌味混じりに呼ばれていた)
そもそも、当の日産自体、こんな結果は予測していなかったのだ。 結局、キャシュカイは日産が想定した3倍を売り上げた。そしてこの成功は、業界にちょっとしたセンセーションを巻き起こした。日産のアンディ・パーマー副社長はTop Gearにこのように語っている。
「キャシュカイはあくまでも実験的なモデルとして生まれたものでした。当時、日産はヨーロッパにおいて、他の日本の自動車メーカーにも後れを取っていたのですが、キャシュカイによって社内が大きく変わりました。キャシュカイは我々に挑戦する勇気を与えてくれたんです。キャシュカイの成功なしでは、IDxも、ブレイドグライダーも、ジュークも、決して誕生することはありませんでした。多少失敗することがあっても、我々は挑戦者でありたい、そう思うようになりました。」
そしてそのキャシュカイは2代目へと進化した。 エンジニアいわく、2代目も初代と同じ挑戦心が注がれて開発されたという。しかし現実はというと、新型はただの改良されたキャシュカイでしかなかった。しかしそれも当然のことだろう。かつてライバル不在だったこのモデルには、今や大量のライバルがいる。にもかかわらず先代のモデル末期でさえ、そんな混戦にキャシュカイは一人勝ちしていたのだから、ここで大きく変えるわけにはいかなかったのだろう。とにかく、それがコンセプト的に新しいかどうかは置いておいても、ルノー日産アライアンスの共通モジュールを用いた最新のプラットフォームを使うなど、最新の技術が惜しみなく投入されている。
スタイリングは先代から激変しているというほどではないが、細かい部分をみればどこも違っており、新型であるということがひと目でわかる。 宝石をイメージしたヘッドランプ、より大胆になったフロントグリル、そして個性的なプレスライン…。内装では、硬いプラスチックがなくなり、先代とは違って退屈さのないものになっている。フロントシートも素晴らしい。
少し大型化し、装備内容はより充実しているにもかかわらず、車重は先代よりも40kg軽量化されている。 大型化された分は居住性の向上に充てられており、先代で不評だった狭いリアシートのスペースを改善している。荷室も改善しており、大半のグレードには荷物が散乱するのを防ぐなかなか有用な仕切りが装備されている。
この車は速さを求める車ではない。エンジンは静粛性と経済性に優れているが、パワフルではない。エンジンバリエーションは2種類のガソリンエンジンと2種類のディーゼルエンジンが設定されるが、ディーゼルエンジンで最高132PS、ガソリンエンジンでも最高152PSに留まる。1.5Lのディーゼルエンジンはおそらくクラスでも最も優秀な99g/kmというCO2排出量を誇るが、こちらは112PSという非力さに目をつぶる必要がある。追い越しの際にはギアを2つ落とさないといけないし、運転するとなんだか神経質になって年を取ったような気分になってしまう。
ディーゼルなら132PSの1.6Lを選んだほうが良い。1.5Lと全く違うというほどではないが、それでも運転していらいらするようなことはない。1.6LではMT以外にマニュアルモード付きのCVTも選べる。このCVTは他のCVT同様にスムーズであるが、他のCVTとは違って変にやかましいエンジン音をうならせることはない。私はオートマ車、特にCVT車は嫌いだが、このCVTは私を不快にさせることもなく、なかなか良さそうだ。
パワーは十分とはいえないが、それでも楽しい車ではある。コーナーではちゃんと曲がってくれるし、VDCのセッティングもよく、俊足な印象を受けた。
ブレーキも優秀で、ピッチングを防いでくれる機能が備え付けられている。この機能はオフにすることができないので比較することはできなかったが、制動時の挙動は綺麗なものだった。乗り心地は最高のハッチバック(ゴルフや、あるいはシビック)に比べると粗いが、車高の高いクロスオーバーとしてはいいといえる。私は4WDよりもFFモデルのほうが好きだ。FFモデルはリアサスがマルチリンクからトーションビームに変更されている。変更の理由は軽量化のため、車体下部の空力性能の向上のため、そしてコストカットのためだそうだが、これによってタイヤノイズも減少しているように感じられた。
カタログを見ると、新技術も多く投入されているようだ。一番安いグレードでも、衝突回避システム、車線逸脱警報、速度標識認識システム、左右のパーキングセンサーがセットオプションでわずか450ポンドで装備できる。最上級グレードの「Tekna」では、このセット装備のほかに、ブラインドスポット警報やアラウンドビューモニター、自動駐車システム、Google連携ナビ、LEDヘッドランプなどが装備される。
不思議なことに、ライバル車がどんどん出ているにもかかわらず、キャシュカイはニッチにしっかりとはまった車のように思える。フォード・クーガやフォルクスワーゲン・ティグアン、ホンダ・CR-Vよりも安く経済的でありながら、ヒュンダイ・ix35や三菱ASX(日本名: RVR)といったアジアのより安いモデルよりも実用的で魅力的なのだ。
私のような先見の明のない人間からしても、キャシュカイはきっと成功すると思わせる、そんな車だ。
Nissan Qashqai Driven